9月号
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専渓蓮は水揚の悪いものである。早帆又は夕刻に切りとって手早く水揚をして、出来るだけ短時間に活けあげるのがよい。活ける時間が永いと水揚に影粋することになる。したがって、技巧的な生花に活ける場合も形のよさと同時に、うるおいの落ちないうちに手早く活けあげてしまうことが大切である。辿花は普通、水揚をして活けあげてから五、八時間程度もてば成績のよいほうでそれほど時間的な花だが、この条件のむずかしいものを材料にして、形式的技巧的な立花(りっか)を作ることは、とにかく苦労なことであるし、全く簡単なことではない。この夏のはじめ、機会に恵まれて「辿の立花」を活けることになり、掲載写真のような「蓮一式の立花」を作った。立てはじめてから出来上りまで約四十分で仕上げたが、この複雑な花形を短時間で作り上げるためには、永年の経験と練達の技巧が必要であり、作り上げて行くその間には、考える余裕もないほど急速に仕事を進めて行く。全く特殊ないけばなといえる。私としては二十年間に一、二作というほどの珍しい作品なのである。(蓮に河骨、紫ききょうを添える)毎月1回発行桑原専慶流単色写真では色彩と花のみずみずしさが感じられないが,緑の葉と淡紅の花,下部に挿しそえた紫ききょうの色調が美しい。伝統的な品格をもつ作品である。編集発行京都市中京区六角通烏丸西入桑原専擬流家元はす1972年9月発行No. 111 いけばな蓮の立花りつか

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