9月号
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にぎよぷこぶし辛夷は日本の山野に自生している落葉高木で、高き叩川を越す野生の大木は開花になると遠くからでもその白い花のかたまりが目立つ六弁の花木である。それより小型の弊辛夷は花弁がロ枚から日枚で巾がせまいので辛夷との見分けはつけやすい。名前は実の形が握り挙に似ているというところからつけられたのだそうだが、そう云われれば実が五つほど並んだところは挙に似ていないことはない。又日本でコブシに辛夷という字があてられるようになったのは江戸時代からだそうだが、唐時代の王維に「刊夷蜘」という詩があるところを見ると日本特産のコブシが辛夷として大陸に渡っていたということになる。そして辛夷という名称が江戸時代になってから逆輸入きれた訳で、植物の交流の歴史も中々複雑なものである。いけ花で辛夷の花はよく使われるが、実は使われていない。くすんだ果皮から顔を出した朱色の実に合わせられる色の花として鹿の子百合をえらび、蛮曲した枝を前後に重ねて実付きを多く見せている。花材幸夷の実鹿の子百合花器灰青色柑一廟壷辛夷の実L7

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