8月号
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まふといりつかいまようすがた私達は様々・宝衣情をもった花をいけている。明るく華やかないけばな。植物の強い表情と向き令つようないけばなもある。だが住み慣れた家の床の間に力まずにいけられた季節の花がいけられていると、ほっとした感じ、家に居るとい、ス女らぎが深く心にしみとおってくる。これは忘れたくないいけばなのもっすぐれた表情なのである。花材河原撫子段九十九(縞太商)だんつくもし甫杜者穂咲七竃花器青向磁水盤花型行の草型二種挿花器灰白色粕深鉢蒲は極地圏とアフリカ南部を除いた世界各地の湖沼の岸辺や湿地帯に生えている。古くから穂綿や葉は人類の生活にとり入れられてきたが、蒲の花としての特質を見出してそれを見事にいけ上げたのは日本人だけだった。当流の伝書「立花時勢粧」六八八年)には蒲を立花の真と請のあしらいに使った一作、他に蓮一色の砂の物の二株立ての真に使われている。十七世紀のヨーロッパでも方々に生えている蒲に対していける花としての美的価値には気付いていなかった。花材としての蒲の良さは、雄花がA又粉を終えて散り、雌花の穂がふくらみはじめてからのものだが、晩秋(一には枯れて穂が崩れ、穂綿が風に吹かれて空中をふわふわと飛んで行く頃も又良いものである。生花としての蒲は水湿地の植物として水盤になみなみと水を張っていけたい。一種いけでもいいが、それではいけばなとしての優雅さに欠けるので位右や小型の海芋など湿地で育つ草花をとり合わせると、蒲の良さをひき出しやすい。作例では蒲を主材にして撃事とり合わせた。日本に自生する蒲属は、蒲、姫蒲、小蒲の三種だが葉が太く葉もしっかりした蒲が姿良くいけられる品種である。蒲は大きいのはこれ近くまで生長する。従って形をまとめやすいように考えて低ミいけると蒲杢米のすらっとした姿を失ない、その上葉の動きも固くなる。私は大体真の高さを九十1一れぐらいにとっている。葉は茎の真中より上から出ている三枚を残してあとは切りとってしまう。そしてあと二、三枚葉をそえるのだがねじれているので必要な位置に必要な面を向けられるかど、?かよく見定めてそえる。副の大きく曲線を描いている葉は予め形をつけておいてからそえる。留、控には杜若をそえたが、留は五枚組に花。控は三枚組に花を挿しそえる。蒲を生花としてすっきりした形に見せるには五本、或は三本がよい。本数がふえると重々しい形になって夏向きの生花にはならない。5

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