8月号
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日本の家屋は‘「夏を旨とすべし」という造りをうけついできた。軒を深<、開口部が大きくとっているので庭木の間を通り抜けて入ってくる風に何とも云えぬ快さを感じる。風通しの良さから受ける清涼感を形で表現すれば簡素ということになり、その簡素な形は清々しさとして私達の心を涼ませてくれる。夏の居間は22度前後の快さに保たれていても、余分な家具や道具類は片付けて、すっきりさせないと、そこは単に気温の低い空間に過ぎない。長い年月のうちにしみついた季節の過ごし方の感覚は中々消えないものである。私達が本当の涼しさを想い出すなら、それは庭に打水し、簾のかかった緑側で団扇を使う黄昏時だった筈である。いけ花も、その演出には欠かせぬ一役を荷っていた。庭からの夕風が床の間の草花をさらさらと揺り動かすと暑中の一日がそこで‘くつろぎの時間に転換される。真夏日、清々しさを求める心は手際よくいけられた花瓶で深く慰められる。その手際なのだが要点は生き生きした姿がまず第一番である。いくら配色か涼しそうでも暑さに参って首をうなだれた花では反って暑すかすかうちた、てかれlh花をクールに使う11

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