8月号
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このテキストに掲載している瓶花盛花には、花台やうす板、その他のしきものを使っている写真が少い。これは写真としてみる場合、薄板花台の類を用いない方が写真効果がよいので用いないのだが、実際はどうなのか、これについて書いてみる。まず、いけばなを飾る場所について。今日の生活として床の間というものが段々と少なくなり、昔の様に床の間に重点を置く飾りつけは一般的ではないのだが、まず、壷水盤の花器を床の間のたたみに置く場合は、当然しき板、低い台が必要である。かさ高い台は瓶花盛花に調和しないので薄板の類がいちばん好ましい。床の間以外の場所、日本座敷には座るという習慣上、低い台、中高の台が調和がよい。床の間の違い棚の下の板には、花台、地板などが適当だろう。その他の場所、洋室の様に立って見る場合には棚、テープルの上に花器をそのまま置く。とりつづけたが、立花というものは花器に花を立てた場合、実際として花台がなくてはバランスが保てない。花台薄板の類があって、はじめて均衡が保てるということになり、従ってこの場合は必ず必要である。また、このごろ、来年度の「生花百事」の本のために写真をとっているのだが、この場合も、たとえ写真のためとはいえ花台薄板が必要であり、また生花の性格上、実際の飾りわないこと|ーはよくない。昨年来、立花(りっか)の写真をつけの場合も「じかおき」花台を使要するに伝統いけばなは必ず花台しき板の類が必要ということである。このごろ花台というものがほとんど少なくなって、簡素な形のものでよいのだが、生花に調和するものがほとんどない。伝統古風な花台は見ることがあっても、今日の私達の好みからは陳腐であり、いかに伝統の生花といえども調和しないし、重くるしい花台など用いない方がよく、有難すぎて古くさくて折角の花を悪くみせる。要は好みの問題なのだが、こうすべきものだという様な形式的なことよりも、いけばなを引き立てるという、実際問題として調和する場合には使う、といった程度がいちばんよいのである。そこで薄板ていどなれば、その中間として手頃の装飾が出来ると思う。違い棚の下や明り窓の板には花瓶は「じかおき」が好ましく、蛤板(はまぐりいた)程度の軽やかなものなれば調和する。花を活けるときは花瓶に水を七分ほど入れ、活けあげてから「たしみず」をするのが常識である。これは必ずまもらねばならない定式であって、稔古のときも実行して下さい。夏季など活けあげた花に「きりふき」の器具で水をかける人がある。これはよくないことで絶体しないこと、水揚げのためによくない。水をかけるとすがすがしく見えるが、当然すぐ乾いてしまう。花につききって水をかけるのだったら、それでもよいのだが、とにかく自分の気持だけで栃吹きするのは意味のないことだし、花のためによくないことである。そんな気持があるのだったら活けた花を毎朝いけ替えするのがよい。水をとりかえ花材の足もとを水切りして、いけかえする様な気持だったらこれは最上である。花展などでよく見る風景だが、作品に水をかける人があって、私達これをみると人ごとながらよい気持がしない。花葉ともによくない。古い考え方だと花の数が四本とか六本とか入れるのはよくないという。古風な習恨だが思いがけなくもそんな質問をうけることがある。今日ではそんなことに神経を使う必要はない。は四本というのはいちばん調子のよい数である。例えば大輪菊、バラなど三本では単調であることが多く、一本増して四本とすると奥行きが出来てよくなる。今さららしい話だが、そんなことを考える必要はない。要は作品として手頃に入れればよい、という考え方が望ましい。伝統の花道では四花四葉はいけない、などといった時代もあったが、これは宗教的な観念が生花に入ってきたもので、今日では通用しない考え方である。かけ花(柱がけ又は高い位置の花)を活ける場合、その高さの関係から立って活けることが多い。座敷の場合には座ってて)みるのが原則であり、座って見て調子のよい花を活ける必要がある。立ってかけばなを活けて調子がよくても見る位置からは、花の下部がすき下葉が少なく形がよくない。この場合には必ず花の前方下部に小さい花葉を入れることが必要である。下葉(みじかく)を入れておくと足もとがすかない、その他の高い位置の瓶花には同じ考え方をもつ。実際、瓶花に入れる花の数(1メーター程はなれ普通の瓶花を活ける場合も花形の下部について同じ様な考え方が必要である。自分が挿けて形がよいと考えても、少し離れて見た場合、足もとがすいている、といった場合が多い。常に注意せねばならないことだが、見る位置は1メーター程度はなれて見るのが普通であるから、この場合も「かけばな」と同じ気持ちで前方下部に短かい下葉を入れておくと、離れて見ても形よく見える。前方「胴・留」の枝葉のその下にさらに一枚入れるのが注意深い花形といえる。常に注意することが大切である。古い花道で「前置」こい」という役枝は、その必要を教えている言葉である。さて、一瓶に活ける花材の分量というものは意外にむずかしいものである。花器と場所の関係があって中々きめにくいものだが、平均して大ぶりよりも小型で厚味のある花形のほうがよい花形が出来る。前後に花葉を重ねて、前の出、後方の奥深い花ほど、味わいのある花形が出来るのが一般的である。分量少ない材料をひろげて大きく見せる様な活け方は、概してよくない場合が多い。枝葉のさばき美しく、前後に深く作る花形がよい。立花生花にしても瓶花盛花のいずれにしても、思いきって深く入れるほどよい作品となる。「総が12 tll fh

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