8月号
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この百合がタメトモユリである。また吉野百合とも箱根百合ともいわれる。山地に自生する野生の百合て吉野や箱根に多く咲くの.て、地方に依っては通俗名て呼ばれる訳.てある。茎の太いものは十数輪の花をつけ雄大な感じ.て咲く。いけばなには一輪つき、二輪つきのものが活け易い。三輪づき又はそれ以上のものは形が悪く少し活けにくい。葉の陽おもては色も濃く、葉の裏は淡い緑色で、活けるときは、全部、おもての見える様にすると美しい。二輪つきになるとかなり重いので、花器の安定したたっぷりとしたものを選ぶことが必要。この百合には、桔梗、りんどう、の様な山の花が調和よく、黄色大輪菊も配合がよい。写真の瓶花はタメトモユリ、カラジュームの二種を、濃い紫青色陶器の壺に活けてある。カラジュームは鉢植のものを切り、株もとを食塩て少しもん.て、そのまま花瓶に挿した。色彩的にも形の上からも、大変調和がよい。左前斜に開花を長く出し、副には左後方へ控えてつぼみの百合を入れた。カラジュームは、中間の位置へ大葉を四牧入れ、その後方の控え一枚、左方斜の胴に小葉一枚を入れた。カラジュームの葉は高く低く、浮き沈みをつけて、葉の組み合せに変化の見える様に挿す。新しい感覚の瓶花となった。12 ツルモドキは山地に自生するツル性のかんぼくである。山裾の樹林の間に、樹木によりかかって出生する。この頃は緑の実だが、秋になって朱色の実を見せる。茎の細いものはかけ花に調和がよい。写真の瓶花は、ツルモドキ、アテチョーク、カラジュームの三種てある。アテチョークは淡紫色の大きい花。カラジュームは白に緑の線条がある。花器は青味を帯びた褐色の陶器て変った形をしている。ツルモドキの左斜〈出た枝、前方へつき出て、カラジュームの上へ重ねて入れた軽い曲線のツル。後方へ高くのびたツル。復雑な形の中に2 真、胴、控の位置に枝を出して花形を作っている。カラジュームは色彩的にも美しいが、全体のみづぎわを、しっかりおさえて、引きしまりをつけている。この瓶花はツルモドキ、カラジュームの二種だけ.ても、配色もよいし、形もよい。八月は花材も少いし、花の日持ちも悪い。少しても氷く保っために、材料選択について、いろいろ考えねばならない。夏は草花の軽やかなものが好ましいのだが、そんな花材に限って日持ちが悪い。日持がよくて感じのよいお花。これについては、余程、材料の選び方に注意が必要.てある。八月の花として好ましいものは白大輪萄、紫花グラジオラス、女郎花、りんどう、高砂百合など。④ 鋏はいつま,てもそのも苓使えるものと思われ易い。切れやんだら研ぎなおすごと。金物屋さんに頼むと研いて呉れます。はさみの切っ先の折れたのは、思い切って新しいのととり替えること。切っ先の悪い鋏ては細部が切れないし、いけばなの技巧に関係します。花はさみの、切れ味のよいもので、花材の茎をさくり1I切る瞑の音1J手ざわりは、花を活けるときの一っの新鮮な感覚てす。ばちり、さくりと切る確信のある鋏の使い方ーー.みをひらける時、指が硬ぱるほど堅は、花の上手な人なればこそ出来るもの.てす。ぐにやりー・'.C切ろの応大体において花の上手でない人。切れ味の悪い鋏、さびた鋏、はさい花鋏、これもよくありません。花鋏は常によく拭いとって手入する。盛花を活けて殆ど出来上ったのに、その中心の花の、ダリア、バラの様な大きい花が折れました。少し折れてうつむく程度なれば、そのままなをります。縫針を一本、花首の裏に一端を挿し、下方の一端を花茎につきさします。これて花首はまっすぐになり、吸水する様になります。菊の大輪花がごもとから折れて、完全に離れました。盛花はすでに出来ておるのに残念てす。この場合は、その大輪の花自を株もとの水辺に丁度、すいれんの花の様に水面に浮かせる様に置くと、思いがけないよい調子の花が作れます。技巧タメトモユリカラジュームアテチヨークツルモドキカラジューム盛夏の花

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