8月号
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木の実や草の実の中には変わった形をしたものがある。草木の自然の姿とはいえ、いかにも面白い形と色で作りあげられた造形、としみじみとみつめるような変わったものがある。これは実に限ったことではなく花の形と色についても、どうしてあんなに美しい色彩が生まれるのか、数限りない花の形、実の類を考えてみると、まったく自然の面白さに心をひかれるのである。「実もの」と一口にはいうが、それぞれ一種類ごとに実の形も違うし、色にも変化が多い。たとえば仏手柑(ぶっしゅかん)柑楢の種類の中に手の形をしているので仏手柑という。きささげの実桐の木の一種。実がささげの形をして二0センチほど垂れる。こぶしの実春に白花が咲き、その後に赤色の実がつく。実に変な形はぶそうの実山の陰地に野生するテンナンショウ科の草。花が終わって後、赤と紫の実がつく。茎に蛇の肌のような模様があり、毒々しい実がついて実に嫌らしい。フォクスフェース洋種ナスの種類。黄色の実が狐の顔に似ているのでからすうりの実る。薮にかかって小さく赤い瓜の形をした実、緑と黄のしま模様のものもあって面白い。なた豆豆の一種。大きくふくれた豆の実、なた豆きせるはこれからきている。その他、面白い形のものが多いと思つのだが思い起こしたものだけを書いてみた。また、外国種の草木の実、ことに熱帯植物の中には珍奇なものが多い。とにかく植物の自然というものは面白いものだし、花や実の形には目をみはるようなものがあいけばな材料にくだものの類を使うことがある。昔の花道では食料になる実ものは活けてはならない、という規定があったが、現在ではそんなことはいわないし、面白い形のもの、美しい形のものは花材として使われることが多い。一例をあげてみると、「柿」これは一般的だが、晩秋のころ柿に菊の瓶花など殊に多い。「栗」初秋のころ盛花瓶花に使う季節感の深い材料である。「枇杷」夏季の頃実の青いうちに使う。「ぶどう」夏から初秋へかけて、坐つきの葉のあるものが風雅である。「ざくろ」夏から初秋のころ実の少し色づいた頃に枝つきのものを瓶花に活ける。「むべ、あけび」夏季の西翠ものの実もの。「青梅の実」瓶花に。る実ものである。木にからみついて変化のある形をつくりあげている。ミオオヤナギ(未央柳)は庭のかんぼくで、これも水辺に出生する実もツルモドキは山裾のくさむらや川辺に野生すョウcツバキキキの。椿は山地の野生、庭の木に夏季に実をつける。それぞれ個性のある風雅な材料だが、日本趣味の上品な花材といえる。それぞれ枝振りを考えて、それにふさわしい花形を作った。7 .... 響

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