8月号
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春の花が終わってやがて七月ごろになると木の実、草の実をみるようになる。夏から秋秋から冬へかけて山野に野生する実ものの類は多いが、また園芸栽培の花木類にも実の美しいものが随分多い。いわゆる木の実、草の実の風雅をみることになる。草木の実は夏から冬まで、かなり長い期間に多くの種類の植物が、それぞれ美しい色彩と変化のある形、風雅な情緒をみせて自然の面白さをみせてくれるのであるが、夏から冬までの実ものを大きくわけて考えてみると七月から九月(緑色、黄緑色)九月から十一月十一月から二月(赤色)このように色を変えてゆくように考えられる。夏の実はすがすがしい緑色に特徴があり秋は黄色から朱色に深みゆく風雅な情緒をみせることになる。十二月の冬になると、せんりょう、おもと、なんてん、山いばら、さんきらいの実など、深い赤色の実が濃い緑の葉の中に点々とみえて、ことに雪のふりつもった中に木の実の赤をみるのは、ひとしお美しいものである。「隆冬いよいよ赤し」という古い言葉にあるように諸木の枯れがれとした巾に、冬の実の新鮮な色彩は一層美しくみえるものである。こんなに考えてみると、夏から冬までの長い期間、ことに種類の多い実ものを、折にふれていけばなに活ける、ということは随分多いことになるのだが、る」ことは、その範囲も広く風雅でもあり、いけばなの中でも特殊な味わいをもつもの、ということができる。この月号には実ものを主題にして作品を作ってみた。(黄色、朱色、褐色)「実のある草木を活け毎月1回発行桑原専慶流黄みどりの桃の実,やまなしの白緑の葉ためともゆりの配合が美しく新鮮である。編集発行京都市中京区六角通烏丸西入桑原専慶流家元1973年8月発行No. 122 いけばな実をいける

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