8月号
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男の人のきもの姿、袴をしゃっきりとつけて眼にしみるような白足袋。巧い着附けの人は、洋服に見ることの出来ない気品と、ひきしまりのある姿になる。ことに中年以上の男性にはきもの姿が実によい。全く日本で生れた衣裳は、日本人の体質に調和した衣服の形と工夫があって、民族衣裳の美をみることが出来る。婦人のきものの美しさはいうまでもない。生花というものは日本の生活の中に生れた花の芸術であって、男性のきもの姿の様にきりっとして、折りめの正しさと日本的な品格をそなえた花ということが出米る。伝統の生花に魅力のあるのは、あくまで日本的な、このきりっとした姿の美しさにあるに迩いない。きりっとした技巧の優れた牛花には、それを作り得る技術が前提条件である、といえる。どんなに好きであっても、あらわし得る技術がなくては、ちょうど希物のえりをだらしなくひろげて、胸高に帯をしめた男の人、そんな感じの生花になるに違いない。袴のひだをととのえるような技巧の美しさが望まれるのは、生花の条件の一っである。Rタニワタリを七本、水盤の生花に活ける。真を少し低くして副(左方)を長くさし出した花形、これは草(そう)の形のうちの花形である。真の立ち葉の右に添えた内副(うちぞえ)の葉に柔らかい曲線をつけて花形に柔らかみを作っている。タニワタリは天草半島の島に、仝島をおおうような野4地があるとのことだが、ばらんによく似た屈じをもっており、生花の材料として好ましい。葉のすその両側を切りとって使うのだが、広葉の材料で葉を刈り「そえ流し」こんで、ほとんど目立たないのは、このタニワタリだけ、という特徴をもっている。c黒い水盤に活けた「オミナェシ、スイレン」の分体花形(かぶわけ)の生花。スイレンの花を低く挿し、葉を三枚、水面に罪かせて、黒色の水の上に緑の葉が図案的な美しさをみせている。オミナェシは花形を少し低めに作って、スイレンとの謁和を考えてある。オミナエシの株もとを美しく揃えて、技巧的にすっきりと見えるように注意した。剣山を砂でおおいかくしてある。7 ⑧c オミナエシタニワタリスイレン

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