7月号
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どぷくり?勺さるとりいばらさんきらい猿取茨(山帰来)仙粛先日、宇治での京都南・伏見区支部いけばな展では苔瞬間の生花や投入・盛花にも「いいな、」と思うものが多かった。この頁の作例と同じような投入も出品されていたが、このテキストと同じでは会場のいけばなとしては物足りないので、鉄線は淡紫色の花を加え、更に荊を三輪そえ、山帰来もふやして頂いた。山帰来は猿取茨とよんだ方が私には親しみ深い。阪急神戸線の岡本駅から北のい刀、六叩山の巾腹に保久良神社の烏府が見える。小学校の頃、家の裏山みたいに思っていたので、休みの円には弟と二人でよく登っていた。鳥居のあたりまでは参道、といっても似一・冗おほどのものだったが道はついていた。初夏の今頃だと大抵夏蜜柑を持って上がったが、鳥居の前に座って食べると、あんなにおいしいものは他に考えられなかった。日航色が広い。大阪湾が紀伊水道あたりまで見渡せる。大きな船でも湾内では八ノット(時速約十五キロ)なので動いているようには見えない。夏蜜柑を食べ終わって神社の裏に出ると、道は幅八OYほどの山道になる。両側から色んな草や低い木の枝がかぶさっていて道が見えにくい。大体の見当をつけて進むと途端にひっかかるのが「猿取茨」である。その赫は聞くて鋭い。暫く立ち止まって、そろり、そろりと足を抜かなくてはならないのだが、下ズボンの私達兄弟の蹴は引っ掻き傷だらけになってしまう。「猿取茨」。猿でもうっかり、その茂みに入ってしまったら動けなくなってしまうに違いない。うまい命名である。花材としては初夏から冬まhでりん出ごまわっている。今頃だと実は苛林檎のような爽やかな淡緑色。八月の下旬になると捻脈色の朱皮の一部に淡紅色が注してくる。そして晩秋にはつやつやした赤い実になる。いけばなをはじめるまで、猿取茨にこんなかわいい尖ができることを知らなかった。ただ憎い茨だとしか思っていなかったのである此頃、花屋によっては材料のない山川来を泣いているが、これは中同原産の品種らしい。薬用として土夜苓というが、この辺の分類はややこしいようで私達にはわかりにくい。梢物名には日本古来の呼び名に、中国と文化の交流がはじまってから漢名も使われるようになった。その上洋名も入ってくると、その辺に生えているような野草に、かわいい横文字名をつけて売られていると、つい口ってしまうのである。山帰来(猿取茨)花器灰白色紬長首花瓶花材鉄線二色11

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