6月号
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六月は百合の季節である。六月に咲く百合は種類も多いが、殊に五月末から六月の中旬まで山に咲く笹百合の花は、花の姿もやさしく美しく、この素朴な味わいを徳富薦花が「自然と人生」の中で「山にありては山に咲き、これ清き天女の面影」と述べた様に、山の花として最も清楚な風情をもつものといえる。私は笹百合が咲くゆえにこそ六月は好きである。c 五月から六月へかけては衣替えの季節である。むし暑い温度に調和するように、私達の衣服もらす着になり、部屋の窓をあけはなって外気を入れる。それと同時に室内副度もさっばりとした感じに飾り附けをかえることも生活の習慣として好ましい。いけばなもこれと同じ様に、初夏に入ると、今までの春の姿から夏姿へと感じを変えることも当然といえる。水盤の水のすがすがしさ、新鮮な緑の木の葉、そこに水草の類を活けて、あるいは山百合の花、ききょうの紫など自然趣味の花を活けるのも季節的にふさわしい趣味といえる。季節のうつり変わりにつれて、いけばなの感じを変えることが大切である。7 ⑪ 季節につれて

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