6月号
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樹根をくりこんで作った木製の鉢。山村の工芸品である。民芸品ともいえる素朴な容器だが、これを花器に使って「ヒメユリ」「テッセン」の二種を盛花にした。テッセンの濃い紫色、姫百合の朱色、きわだった色の対照をみせて美しい。テッセンのくすんだ緑の葉、ヒメユリの黄みどりが交って、黄椙色の花器の色と調和して、派手やかな色の中に落着きのある色調である。てっせんは洋名紅色、淡紫、濃紫色その他に園芸種が多く、中国原産のこの花は江戸初期に渡来したもので、その茎が細く針金状なので「鉄線」と呼ばれるようになった。朱色の姫百合、紫のてっせんはその色といい花の形といい、朱色というと神社建築の色や印肉の朱を思い起すように、古い日本的な色であるし、紫も古い衣裳の色や植物の「ムラサキ」の草、の木を思い起して古典的な中に華やいだ色彩を感じさせる。朱色の花というのは案外少ないもので試みにしらべてみると、姫百合、鬼百合、車百合、ひなげしの花、がんび、きんせんか、くじゃくそう、サルビア、トリトマ、ゴクラクチョウカ、クンシラン、の他あるだろうが意外に少ない。これにくらべると紫色の花は種類が多い。かきつばた、はなしょうぶ、りんどう、ききょう、野菊、しおん、とりかぷと、すみれ、とらの尾、おだまきふじのはな、ちどりそう、すおおの木、あさがお、やぐるまそう、サイネリア、セベリア、アテチョーク、その他にも随分ある。多いのは赤色紅色、黄色、白色の花である。秋から冬にかけての木の実には朱色のものがかなり多い。また紅葉という代表的な植物の美がある。「クレマチス」といい、日本的な感じの深い花である。「ムラサキシキプ」ヒアシンス、アイリスそ専渓白花、暗朱と紫毎月1回発行桑原専慶流No. 108 てっせんひめゆり編集発行京都市中京区六角通烏丸西入桑原専慶流家元1972年6月発行しヽけばな

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