5月号
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にわと乙つばき重切筒)かきっぱたr、生花には花台か薄板を使うのが調和がよい。花形花器が下部に台がないと調和がとれない。花形とのバランスの関係があって、花器と花だけでは下部の調子が落着かない。瓶花盛花には花器をそのまま場所に置いても調和するのだが、生花の場合は、低い花台又は蛤(ハマグリ)板をしくのが好ましい。ぐっと形が引きしまる。「旅枕」という竹器に二重生の生花を活ける。花材はにわとと、亦椿、カキツバタの三種である。早春二月、かんぼくの中にニワトコが浅緑の若芽を出して、いかにも春の到来をつげている様に感じられる。枝振りに変化の多いものだが、瓶花の材料としても面白く、生花に活けても風雅である。柳と同じように芽が大きくひろがったのは俗っぽいが、堅く小さい芽を枝先につけている姿は、なんとなく俳趣があって風雅を感じられる。雪や氷のある朝、早春の陽ざしを・つけて、庭の隅に思いがけなくもニワトコの緑の若芽を見て、早い春の季節感をvつける。小きい二重切の竹器を山してきで、乙れは生花に活けるのが面白いと、枝振りを考えて上段に副を張らせ、その下部の胴の位置に変化のあるものを選んで「胴流し」の花型を作る。根じめには赤のやぷ椿を入れ、素朴な調和を考える。ひとひねりした胴の枝が中々面白い調子である。下段の窓にはカキツバタを花一本、軽く葉組みを添えて小品に活ける。上段右勝手の胴流しの花形、下段は左勝手の登り生けである。薄板にのせて飾ってみると、なんとなく古風な江戸時代の絵巻にみるような、古雅な感じの生花となった。自然で出生する早春の花材を取合せて、外見は華やかではないが、静かな趣味のあるζんな感じの花材を活けるのも、しみじみと落着きがあって楽しいものである。庭にまだ淡雪の残る冬の朝、火鉢を横においてとの花を活ける。古い昔の懐いが心の中にしのびよって、ほのかに暗い部屋の紙障子を漉す朝の光りが、との生花を浮き出す様にしっとりと見えてくる。生花--.. 4

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