5月号
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藍絵の花瓶は夏にふさわしい花器である。時代をへた染付の花瓶も落若きがあってよいものだが、新しい藍の絵の花瓶はすき通るような白地に藍の色がはっきりと浮き出て、この上もなくすがすがしい感覚をうける。浴衣の紺の色の様に白と藍の配合は清爽、透明の印象をうけるものである。この藍絵の花瓶に、緑の葉の芦にこうぽねの黄花と濃緑の葉の配合など、花器の性格とぴったりとした花であって、初夏のさわやかさを感じさせる取合せであろう。この花器に笹百合一種も清雅といった感じをうけるし、に紫桔梗など、花器を一阿引き立てることになるだろう。昔の人が藍絵の花瓶は夏の花器ときめたのは、この清冽な味わいを宜美したものに迩いない。絵のある花瓶でも九谷焼の色彩陶器は重厚な感覚がある。例えば浮世絵のような色彩画よりも、江戸初期の風俗絵巻にあるような重厚な色彩画と同じような印象をうける。もちろん古九谷の花瓶、現代の九谷を通じて名作からうける感じである。九谷焼のような濃厚な色彩陶器には花が活けにくい、と考えられやすいが、実際は決してそうではなく、緑の葉の雪柳優れた九谷には、紅の八重椿、紅色の牡丹、紫花のてっせんなど、濃厚な花が意外に調和して充分気品と落秤きのあるいけばなを作ることが出来るものである。夏になるとホウの葉も大きくなり、一枚の葉が長さ40センチ、はば20センチにもなる。この大葉にたべものを包んで皿の代用にするのは山村の習慣である。高山市のホウ葉味咽は有名であり、素朴な惜緒が感じられる。の枯れ葉もまた風雅である。瓶花の材料に好ましい。ホウ(ホウの木テッボウユリ)R 大きい鉢に煮ものなどを盛って,なにかの集まりの席に使ったものだろうが,匝径35センチもある大振りの容器である。藍絵で花の図案が描かれており,これを花器に使って花を活けることがよくあるが,色彩的に花との調和もよ<'R 古い有田焼の大鉢である。昔はこのようなたっぷりとして大きい花が活けられる。写真の花材は「ホウの木,テッボウユリ」の2種だが,ホウの木は黄緑の若葉が新鮮で,掲色の枝の線が匝線的に単純な形で,いかにも季節的に清爽な感じの材料である。白百合との調和も新鮮な味わいがある。10 ••••

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