4月号
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山桜となたねの二種の瓶花である。真、副、胴、留にさくら、留から中間へかけてなたねが入っている。花器は濃いグレーの壷で配色のよい配合である。写真もよくとれているし、桜の閲花が美しく季節感のある瓶花である。さて、この写真は昨年の春に写したものだが、どうにも気に入らなくて、そのまま桧てておいた写真なバランスの悪い作品のだが、なぜ、よくないかということを考えてみるのも研究になることと、掲載することにした。花材も美しいし、すつきり出来上つているのだが、まず第一に花器の選択が悪いということがある。背の高い花器に対して下枝をさげて桜の枝を花器の前へおき、下部の調子を作つている。首もとの狭くなったところ、壺の下の部分がほそっとして格好がよくない。口もとが細くせばんでいるところへ、花材が多く入っていて少し窮屈な感じがする。要するに化器の形が悪いところからはじまつて、活けにくいということになつている。この花器はよくない陶器で、高さ口もと、形など、おらない花器である。こんな花器には活けにくいし、折角の花を花器のために悪くされている、といった感じである。こんな花器を使わなければよいのに、ということになる。しかし、時とするとこんな場合が起つてくる。折角活けたよい花なのに、なんだかおかしい、というのはこんな場合である。次に、この花形は変った形である。真を右に傾けてあり面白い格好だがこんな場合には花器の低いものを使ったならば調子よく見られると息う。下枝のさがつている閑係上、背高い花器ということになったのだがバランスがとれて真は普通は左へ傾けることが多いのに、反対の右に倒し、変った調子だがむづかしい形である。この花を理想的に注文すると、25センチ程度の高さの丸い壷に入れて足つきの花台にのせたならば、丁度おさまりのよいバランスになるのではないかと思われる。時々、こんな形の真を作る人があるが、よほど考えないと失敗率が多い形である。花材も美しいし、技巧的にもよい瓶花であるのに、も一っ、というのはそんなところに原因がある。この壷は大きい割に平凡な下級品である。私の家の花器の中にあると息うのだが、現在、あまりみかけない壺である。新品であることと、下級品であることは写真をみてもわかる。材料も美しく、活けた技術も美しいのに、なんとなくよくないのはなたねくありますから、皆さんも注意して花器に原因がある。こんな場合がよ下さい。失敗作の例題も―つの参考になると思って掲載しました。失敗作に限つて、いやに写真がきれいにとれている。またこの花形の場合、左の下枝(胴の部分)にもう少し強い枝を入れると、右上の真とのバランスがよいと思われる。とにかく、バランスのよくない花である。紅椿をもう一種加えて花器の口もとをかくすのもよいだろう。瓶花山ざくら12

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