4月号
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いけばなを写真にとるのはなかなかむづかしいものである。何十年となくいけばな写真をうつしているのだが、それでも時々思いがけない失敗をすることがある。最近、カラー写真が手軽るにうつせるようになっているのだから、色彩のある花の写真は当然、カラーでとるべきだが、さてこれを印刷にする場合、カラー印刷は経費の関係上どうにもならない、ということで白黒ですませることになる。お体裁に一枚や二枚をカラーで撮つても意味はない。やるならオールカラー、というのが私の希望なのだが、まあねえ、というのが現状である。さて、いけばなには必ず色彩があるのだから、単色写真ではどうにも作品の感じを伝えることができないという場合もある。そんな場合に、白黒写真で色彩を感じさせるような写真をとることが、撮影者の技術であり、同時に花を活ける人の技術でもあるわけだが、ともすれば、美しい花の色に迷わされて失敗することがある。たとえば、紫色はどんな程度の淡墨色になるか、黄色は、オレンヂ色はどんなに写るか、などと活けるときに考えつつ写す。写真は小西進氏にすべて撮つてもらうのだがつて光線をいろいろ工夫して立体感を出そうと工夫する。うつりにくい花材もあるし、花器も同様に調子よく見えない花器もある。なにしろ用務の多い中に、すきをみつけて、今日は撮影と急にきめてあわただしくとりかかる。まず第一に花材が花犀に都合よくあるか、どうかが問題である。それでも運にまかせて花屋と連絡をとり材料を持つてこさせる。なにしろ時間か限定されているのだから(定めた日に撮影しないと、その次は私の都合もあつて数日おくれる)、ひいては原稿書き、印刷と段々おくれて発行日に影孵をあたえることになる。大切な作品写真を作るのに、これではよくないと思うのだが、毎月発行のテキストだから、そんなのんきなことはいつておられない。その日に好ましい花、面白い花材があるとよい写真も出来るのだが、それも材料まかせ、その中に頭を使って、なんとか研究的なものをと、気を配りながら、花を活け写真をとつて行く。大体、午後七時ごろから活けはじめ一瓶15ー20分で活け、写真が10分五OOWのスポットライトを三個使程度をひとくぎりに、その仮おそく午前2時ごろまで休みなくつづけて十五・六枚の作品写真を作る。バックは横巾3メーター程度の洋紙の厚手の巻上げバックを使用している。色をかえて3枚ほど設備しているがこのバックはイギリス製の写真バックで、大阪の輸入材料店で買った。ほとんど休む時間もなく次から次へと活けて写真、また次へかかる、といった状態である。その中に特徴のある作品、講座のために参考になる作品、をと思いつつ作つて行く。この時間の中に生花を活けることにもなるのだから(活けるうちは、小西写真氏が待っている)た花の入らないのを残念に息つている。さて、写真が出来上つてくると、思いがけなくよい作品が出来ていることもあり、予想の様に写つておらない写真もある。花がよいと写真が悪かったり、写真がよいと花が悪いといった状態で、これはよいな、といったものがなかなか作れない。それでも期日は迫つていてやりなおしはできない。気に染まぬ作品ながら印刷に廻すということがよくある。花の色が案外、写真ではよくうつらないという場合がある。随分なれているつもりだが、よほど注意しないと失敗することがある。いけばな写真は実にむづかしいものである。、落着いぽたん(窓の中の花)いけばな写真よいいけばなであることよい写真であること11

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