4月号
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濃紺の壷に活けた黒百合の花。一種挿で充分だが、軽やかな雲竜柳の枝をあしらって瓶花とした。この場合は黒百合が主材といつてよいだろう。緑に光沢のある葉、黒く掲色の小さい花、自然の雅趣に寛む花である。雲竜柳の曲線の枝は柔かく美し雲竜柳く、百合の前へ細い線を軍ねるようにして挿すと、軽やかな感じの中に奥行きをつくることができる。分量少なく活ける方法が、いちばん美しく見える活け方である。枝線を芙しく使うように注意する。雲竜柳でも普通のたれやなぎでも黒百合本州中部以北の山に野化する高山植物である。初夏に咲き黒褐色の六弁の小さい花を咲かせる。いろいろな伝説の中にあらわれる花であるが、北拇追ではアイヌ族の間でこの黒百合を思う人に贈れば、その恋が成就すると伝えられるそうだが、富山県や長野県では人を不和にする化として、呪いの花ということになつている。そんな感じで黒百合をみると、なんとなく仏説の中に咲く花のように思えて、白山や立山の高原に咲くこの花がいよいよ神秘的に感じられる。牧野博士の草木図説によると、この花はバイモの一稲であつて、ユリ屈ではないと記されているが、全くバイモとほとんどよく似て花の形も大きさも同じほどである。山に野生の草花だが園芸で栽瑞することもでき、私も宝塚線のある混坐で、鉢植えで花の咲いているのをみたことがある。「ゆあみする泉の底のさゆりばなはたちの及をうつくしと見ぬ」与謝野晶子の「みだれ髪」の中にこんな歌があったが、百合は自然と生活の中にある美しい花である。くろゆりに尾瀬沼に咲くミヅバショウこのごろはやりの山の花。みずばしょう

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