4月号
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の趣味は少いー~ということにな一年中に咲く花は随分、種類が多いが、そのうちに少く活けても引きたつ花、少い方が美しく見える花。またこれとは反対に、沢山数多く挿しても嫌味がなく、いよいよ美しく見られる花材。こんな区別があるものである。もっと極端に言うと、少なければこそ引立つ花もあり、盛り上げる様にさすほど、美しく見られる花がある。私達は四季を通じて多くの花を見るわけだが、「花材の分量とそのよしあし」といった方面から考えることも必要なことである。こんな意味で材料の種別を考え様と思うのだが、その前に、いけばなの必要とする次の条件を、第一に考えておくことが大切である。飾りつける場所2 いける花器以上の三つの条件が、材料の選び少い方が見よい材料多く活けてもよい材料3 花材の種類(家庭のいけばな)豊かに豪華に方や、分星に関係をもつことになるわけで、日本座敷の場合、洋室の飾花の場合によって分量が変つてくるし、和室の場合でも広い場所、狭い場所に依つて花の用い方もちがう。花器の大小や、花器の趣味形式、色調など花材の用い方に大変影響がある。そんな訳で一般的に花の分量をどの程度に、とは中々定めにくい関係にあるのだが、ここで、私が言うのは、材料のもつている個性そのものが、多く入れて引き立つ材料と少く活けてこそその花の味わいを感じられる、といったものを、少し例を挙げて考えて見ようと思うのである。(少ない方が見よい材料)これは日本種の花に多い。大体、日本人の花の見方は、その花が外面的に形や色彩が美しいという見方だけでなく、その花のもつ情緒、詩的な味わい、郷土や歴史に関係をもっ花。また季節のうつりかわりによって変化して行く草木の形と色調。この様な花のもつ味わいを、くみとろうとする、そんな見方をする訳で、花の分量にしても、多く分量を活けるよりも、少くてこそその味わいが感じられるといった様な、いわゆる風雅に通ずる花の見方や、選び方をする場合が多い。日本の花といわれる四季の花々をツバキ見ても、その形や色や惑じが、いかにも日本的な静けさをもつているものが多く、これを洋花といわれる外国種の花と比較して見ると、その色調、形、惑覚などが非常に違つており、ひと言葉にいえば、洋花は表面的にぎわだって美しいが、日本流る。さて、「少い方が見よい材料」というのを考えてみよう。少<挿すほど引き立つ材料である。かけ花に挿したツバキの小品の味わいは、日本のいけばなを代表する惑じといえる。数多く挿したツバキは品格が悪くよくない。カキツバタ、スイセン二、三本までが適量の花である。葉に味わいのある花oハナショウブも同じこと。ササユリ、キキョウ、リンドウ――一本から五本程度がよい。根じめにもよいが、一種挿として適当。ォミナエシ、ホトトギス、サンギク静かな情緒の花で、分量少く活ける。ユキャナギ、コデマリ、テッセン軽やかにさらりとした味わいが美しく見られる。パイモ、ヒメユリ、アザミ、オダマキ草、スカシュリの様な材料は、いずれも少量に挿してこそ、味わいの深い材料である。洋花でも、フリーヂヤ、マーガレット、ガーベラの類は淡白な惑じの方がその花を引立てることになるであろう。この様に考えてみると、日本種の花は分量多く入れて美しく感じるものは案外少い。以上は一例を挙げたにすぎないが、花の性質を考えるとその適当の分量も、自然にわかつて来ることと思う。(多く活けても美しく感じる花)たっぷりとした水盤や壺に、豊かに挿した花は華やかである。分量多く活けて美しく感じる花材。これも、特長をもつ花材といえる。少し例を挙げてみよう。カーネーションタリァスイトピーラッ。ハスイセンアイリスヒマワリボタン以上の様な花は、分最少く活けてもよい材料だが、反対に数多くたっぶり挿しても美しく見られる材料である。洋花に多い訳だが、花の集りゞノストックチューリッ。フアジサイグラジオラスヵュウ大輪菊ーラによって、美しい色のかたまりを見る様な気持で挿すことのできる材料である。二、三本の花に深い味わいを感じる花もあり、また、けんらんとした花の集団が美しいいけばなとなる様に、それぞれ用いる場所によって材料の選び方も変つて来る。分量の少い花にも、その数量以上の深いもち味をもつ材料のあることまた反対に、数多く活けることによつて、別の美しさを作り出すことのできる花材。それぞれ特質をもつていることを理解せねばならない。以上は家庭のいけばなとしての考え方をお話した。しかし、いけばなは家庭だけのいけばなではない。広い洋風建築のホールに活ける花。大きいショウウインドウのいけばな。いけばな展の作品その他、用途は広い。従って用いる場所によって活け方も変えねばならないし、花器も花型も、用いる材料の種類も、その分最も変つてくる。ツバキの小品が美しいというのは家庭の花としての話であって、会場に使ういけばな材料としてのツバキの花は、花も葉もたっぷりと用いなければならないし、大きい場所には大ぎいひろやかな感覚をもつて、材料を配合することが大切である。花の個性を考えると共に、その場所に調和する分量を考える事が大切。8 花材の分量

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