3月号
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ニけむ人ぎ出ょうの少ない閑かな季節である。寒かんいしょうかん毎年京都駅の新幹線のコンコlスで、京のかん冬うのち旅・京都名流いけばな展が「寒の内」に始まる。あまり使われなくなった言葉だが「寒の入り」は一たい月か六ん日の「小寒」から、二十り日つしのゅん「大寒」を経て、六日の「立春」で「寒」が明ける。でもまだ京都の底しず冷えは続く。そしての行、寒稽古、そして花も真冬に咲くと、それを寒桜、集、菊、寒牡丹、寒椿と、秋や春の品種と異なった感ばな展に出品しているが、やはり寒二月里尽の町家はだんだん少なくなってきたが、町家住まいはいいものであ冷え、という不満はあるかもしれな深く感じるのは、やはりこの季節でじで見ている。私も毎年一月に、京の冬の旅いけの内の京都を強く意識している。私は冬の京都が好きなのである。る。閉鎖的で暗い造り。その上に底い。でも本当に閑かな京都の良さをある。町家暮らしの良さを支えているのは、奥の間と中庭だと思う。庭は常緑樹と白川砂、小さな庭には、あまり大きくない石さもざん据かえられている。花木は椿と山茶花ぐらいで、あとは松というのが主構成である二年中変わらない表情だが、初冬になると山茶花が咲きはじめ、一足遅れて椿が開く。京都の町家は冬が花なのである。そんな暮らしをしていると、京の冬の旅いけばな展にも、昔から守っている京都の冬の暮らしを写し出してみたくなる。そこでよくいけかれるあのしかがれす苔す生きした寒梅、椿、それに枯芦や枯薄である。今年は立花形式でそれらの花材をいけてみた。私が暮らしている京都の冬の件まいなのである。千二百年前に聞かれた古都。平安時代から鎌倉、室町、桃山、江戸と日本最古の都会は、それにふさわしい暮らしを続けてきている。京の冬の旅、という催しは、市の観光協会が企画している。閑かな冬の京都の風物は、そこに住む人々自身のものである。どかどかと旅の人が見物に押し寄せてほしくはないのだが、せめて京都の入口の新幹線には、それらしいものを飾りたい。冬の京野菜をたのしみ、庭の椿、そして小雪の舞う三条大橋の上で寒空の北山を眺める京の冬。それが今年の冬、京都駅新幹線のコンコlスに出品した私の立花である。寒の内仙驚10

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