3月号
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:::松槍の風流なるをあしらふべし。」と述べているように、何かをあしらうとかすることで、桃の美しさがより印象的になる工夫をしたい。日頁の小品生花は、小型に工夫する中で桃の特徴を引き出している。細枝を小さく生花にまとりんめるのは技術がいるが、雛人形の擦とした美しさに通じる生花にもなりつる。又、取り合わせる花材や器を工夫してみるのもいい。日頁の作例は、両親がトルコで買った銀茶器の下の盆に桃と濃紫色のスイートピー、上のポットに白椿を一輪入れて二つで一つの花としていけてみた。叩頁の小型の生花とこの二瓶飾りを見比べるのもおもしろい。同じ取り合わせでも、生花の足元が一つにまとまった姿には植物の気品がうかがえ、自由花型には、洗練された感覚があればもっと素敵ないけばなが生まれそ、つな予感がする。ただ、いけてみて初めて気づいたり発見するものがどちらにも必ずある。生花の技術の修練の先につかみとる花の真の美しさ。日常の暮らしの中でふとみつける自由花の自分独自のスタイル。花はいければいけるほどその中から何かを与えてくれる。雛人形を箱から出す度に、物の大切さ、造った人の、持つ人の心がその物に命を与えるということに気づかされるように、花にしても物にしても、触れながらその心を伝えていく文化を大切にしたい。桃をいける度にそんな事を考、えさせられる。11

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