3月号
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ヨーロッパの陶磁器オランダの小さな町の、小さなクラフト工房で、かわいい陶器の一輪挿しを見つけたので買おうと思ったら、「日本にはこんなものぐらい‘いくらでもあるでしょうに、」と女主人が謙遜していた。欧米では日本の陶磁器は高く評価されている。わざわざヨーロッパで買って帰ることはないのかもしれないか、ドイツのマイセンや、作例に使ったハンガリーのヘレンドの陶磁器は厄介な荷物にはなるとはわかっていてもつい買いたくなってしまう。永年同じ形、同じ絵柄で均質に工場生産を続けているので手のこんだ器も精巧で色彩も洗練されている。日本のように、土と焔の神秘な戯に祈りをこめて焼き上がりを待つ焼き物との違いはやはり自然観の相違なのだろうか。ヘレンドの角型花瓶に椿をいけてみた。ヘレンドといっても蝶や花の絵かカラフルに猫かれているものと違って緑の花柄模様は白地を大きく生かしているので椿の葉色ともよく合い、白‘薄紅‘薄紅の覆輪の三種の花の色もうまくおさまっている。だかやはり冷たい感じの磁器なので盛り上げるように葉を豊かに見せていけた方がよいだろう。一度椿の花だけを大量にいけてもみたい。花材椿三色薄紅花器ヘレンド花瓶紅覆輪11 白

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