3月号
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糸川ヲQ。楼に薮椿、と云えば、それは誰もが見慣れた平凡な季節の風景の一駒かもしれない。だがこの二種の花を生花としていけてみると、季節感の上からも、配色の点からいっても無理がなく、自然な形におきまる良いとりあわせで使った桜は彼岸桜より少し枝先の太い啓翁桜である。他の桜よりかなり携めのきく桜だが細枝にはあまり手を加、えず、副と流し枝の胴には切り携めをして形を整えている。胴流しの上に副も長くとっているので留は短く押さえたが、留の沈みを胴に寄せて持ち上げてみた。短い留の後に沈みをつけ加えると葉のかたまりができるので、たまにこういう留を作ることもある。三月半ば、桜の開花を待つ頃の生花である。花型胴流し花器筒型陶花瓶花材桜薮椿棲薮椿同リ4

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