3月号
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し‘,0 豪臨作30分程度に仕上げるのが理想である。長く一作のいけばなを作る時間、その作品によって一定にきめられるものではないが、普通一作に30分(盛花、瓶花の場合)程度がいちばん適当だと思われる。花展などに出品する場合、一作に3時間程度までかける作品もあるが、家庭のいけばなの場合(けいこ場で活ける時間も)は大体一時間をかけるのはよく考えて丁重に作り上げるというよい而もあるのだが、ほとんどの場合‘―つの枝葉を挿したり替えてみたり、判断に迷っている時間が多いのが普通である。決断をつけないことは結局、材料をいためることになり、また活ける人の心身の疲労も加わって、時間がたつにつれて花材の新鮮さが失われることになり、出来上がった作品には新鮮さがない、ということになる。早く活けるのが決してよいことではないが、常に時間をかければ花のうるおいが落ちてゆく、ということを考えつつ出来るだけ手早く順序よく仕上げるのがいちばん理想的な姿である。三稲別の作例に挿花時間を書き添えておいたが、一応の参考にして欲しい。もちろん私の様な花道の専門家と一般の習う人達とは同じ様に考えられないが「迷つ時間を短くする」「手早く活けあげる」ということを常に考えたいものである。段々暖くなると材料の関係上、一層この活上げ時間を考えねばならな4。ヘージから9ページに掲載した三月から四月へかけて、暖かさが増すにつれて、いけばなも華麗な花の美しさよりも、淡彩にして清楚な趣味のものがさっぱりとして好ましい。緑を多くして強い色の花は数少なく入れる。カキッパタの様な清爽な感じの花を活けて季節感を味わうのも、この季節の考え方である。ヤブツバキヤブツバキも老木になると枝幹にさびがあり、枯淡な感じがあって風雅である。幹が白くさびて葉つきもまばらにその間に朱赤の花が点々と見えて美しく深い雅致が感じられる。これにアィリスの青色の花4本を配合する。花器は黄土色に黒色の上ぐすりがかかっており、花との配色がことによい。左へのびた椿の形、アイリスの葉の折れ下った一葉など、全体の花形との釣合いを考えてある。左勝手の副主型だが、アイリスを高く挿しているのは左方の椿の長さに対するバランスを考えた形のとり方である。季節の作品(3作)アイリス挿花の時間礫R 10

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