1月号
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温室花の見られない昔には、冬のいけばな材料というとほとんど数少く、梅、ろうばい、つばき、水仙、なたね、おもと、せんりょう、なんてん、その他の実ものの材料が主たるものだった。ことに実のなる木ものは重要な冬の花材であり、梅もどきの晩秋から、なんてん、せんりょう、からみづき、もちの実、たらえの実、いいぎりの実など、赤い実ものが珍重された。なんてんは、その中でもいちばん多く手近かに得られる材料なので、立花生花にも多く使われたが、今日では温室の花材が多く出廻るようになつて、自然花のいちばん少い2月などは、温室花の最盛期で、豊かな美しい花を自由にみることができて、いけばな材料にも不自由を感じることもなくなり、自然花と温室花とをあわせて使えることとなった。このページで「なんてん」のいけばなを三つ作ってみたが、なんてんという材料はなんとなく古めかしく、そのままの形がよいというだけでは面白くないし、なんとか新しく明るく見える工夫が望ましいと思うので、ここに掲載した三つの作品には、そんな考兄方を加えて少し調子を変えて活けてみた。Rは「なんてん、水仙、アロカジャ」の三種を、木製の花器に立体調に活けた盛花である。なんてんに水仙は調和のよい普通の配合だが、これにアロカシャを添えているところが変つていると思っ。なんてんの葉の少い変調な形のものを選んで、たっぷりとした実の目立つように。これでないと水仙もァロカジャも引き立たないことになる。Rは「青芽の柳に白椿、なんてん」の三種だが、この場合はなんてんの葉を全部とり去つて、したところが着想である。椿の緑の葉がたっぷりしているので、なんてんの葉はむしろとり去った方がよく、全体を引き立てることになる。こんな考え方は自然の形をとり変えることになるわけだが、他の例でいえば、カユウの花だけ使うといった場合、梅もどきの葉をとり去つて実だけ使う場合と同様、決して無理な考え方ではない。幹についた実だけにR 2 青芽やなぎなんてん白椿R なんてんァロカシャスイセン

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