1月号
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c ぼけ・すいせんc十一月に入ると桜、ぼけなど返り花の花が咲く。雪柳やつつじなどにも返り花が咲き、雅趣のある姿を見せる。ぼけの葉がまばらに残っている枝に紅花白花が咲き、実のある枝もあって晩秋の季節に風雅な姿を見せている。すいせん、椿、なたねなど調和がよくアイリス、ゼラニュームなど洋花も配合がよい。写真の瓶花は濃紺色の洋風の花瓶に挿したが季節感のある配合である。すいせんは水盤に活けるよりも深みのある花器に入れるのが足もとの調子がよい。右方の一方に株を密せ、左方の花器の内部の見える様に活けると形がよい。津山という町は静かな落着きのある町である。倉敷から伯備線に乗って二時問ばかり、各駅停車で夜に入ると列車の窓からはほとんどまっ暗な山道と田園がつづいて、高梁川の岸に添うて走って行く。高梁(たかはし)から津山口、ようやく津山駅に若く。津山へは四年ほどになる。町の様子もすっかり変り近代的な駅前の姿がととのっており、山陽縦貫道路の開通もあって活気のある町になっている。花展の活け込みをすませ、その翌日、清明な秋日だったが、思いがけなくも八階建のホテルの朝を迎えて、その裏山の津山城跡へ登る。江戸時代の津山藩の面影を残す古城のたたずまいにも品格が感じられ古さびた面影があって、岡山から鳥取への中間の古い城下町は、丁度、京都や飛騨の高山の様に山にかこまれた古都の趣きが感じられる。私にとっては曽遊の津山なのだが、この前にきたときにはやはり十一月の下旬で、奥津温泉に一泊、車を頼んでウランの工場で有名な人形峠を廻ったことがあった。今度の場合と同じように晩秋の頃だったので、紅葉も終わりがたの秤谷や山には満目黄葉の景色で、京都の山地とは異なった風景に感動したものだった。その時、車の窓から農家の庭に「まゆみ」の樹が数本、紅色の実が群って見え、実に見事だったので、とにかく下車してその庭に入りこんでしばらくながめたことを記憶している。今月号の写真の中に「まゆみ」の瓶花があるのだが、その鮮膨な色彩は忘れ得ない美しさであった。津山への思い出である。津山5

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