1月号
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「葉の下に」モンステラの大葉の下に短かく挿したバラの花これも変った花の使い方です。(モンステラまゆみバラ)皆さん、あなたたちは下葉(したば)の美しさについて考えたことがありますか。たとえば楓樹の茂った谷川のみずぎわに重たそうに垂れさがった楓の枝、それが青風の季節でも、紅<黄色に彩った晩秋の季節でも、流れる渓流と調和して全く絵のような格好のよさです。その楓の下葉の奥まった小暗い雑草の中にやさしい花の色、夏なればあじさいの淡い紫、初秋の頃には淡い青色の野菊のひとむら、それこそ屁逸の美、寂雅のやさしさを感じることでしょう。私達が花を活けるとき、こんな感じの葉蔭に咲く花の姿を考えるのも面白いと思つのです。たとえば夏のころ、みずみずしい緑の山木の葉をたっぷり花瓶に挿して、その株もとの臭深くに山百合の開花一輪が見えて、すそもとにしだの葉の群がりがある、といったようないけばな。古雅な梅の木の株もとに奥深くわびしく咲く赤椿の花。こんな趣味も中々面白いものです。花は奥深く使うほど品格が高く見えるものですが、自然の情紹を心において活けるのも、花の梢趣を一府深く感じさせるものです。瓶花の場合でも、盛花の場合でも、前方へさし出る枝のその下へ短い花葉を入れるような形は、花形に深みを増すことになりますし、近く寄ってみるのもよく、少し離れてみても花形の下部がよくととのって美しい形にみえるものです。枝下(えだした)の花と葉について、その用い方を考えることが大切です。写真の瓶花は(まゆみの木)(モンステラ)(バラ)の三種ですが、モンステラの葉を前方に挿し出してその下にバラの濃紅色の開花、白色のつほみを入れてあります。花器とのバランスも変わっていますが、ロもと低く入れたバラの花葉も而白い入れ方です。写真では前後の深さがわかりにくいのですが、以上に述べたような、足もとに短く入れた副材の形に特徴のある瓶花です。まゆみの枝を左の方へ真胴副と入れ中間にモンステラ、このモンステラの葉を巾間主形の形に右方へ中段の高さにさし出してありますから、その下の広い空間にバラが深く入ることになります。もっと深く控までバラを入れることも出来るのです。モンステラの葉でかくれるほど、奥深く挿して行くといよいよ変化のある花形となります。モンステラの葉は切れめの形に特徽がありますが、花器にも切断面があって面白い形です。褐色の花器にモンステラの濃緑、まゆみの渋い紅色、バラは濃紅と白色、これらの配色がこの瓶花を一層新鮮に感じさせるわけです。12 さ

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