12月号
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.i‘ どんないけばなでも優れた技巧が必要であることはいうまでもありません。ことに生花は技巧の花といわれるぐらいですから、すべてにわたって美しく仕上げる技術が必要、ということになります。いけばなが美術であるためには、それを作りあげる技巧(わざ)が優れておらねばならぬ、ことはいうまでもありません。生花(せいか)には、樹幹、樹枝、草ものの細い茎などを美しく揃えること、その切りすかし、葉を重ねる技法、枝をためる、など美しい生花を作るためにはいちばん必要な技術です。そのしごとが優れているか否かによって作品の優劣が定まることにもなります。また花の配列に対する考え方、これらは瓶花、盛花の場合にも必要なことですが、生花は特定の花形を作る、ということがあって一階、緻密な技巧が必要とされるのです。真、副、胴、留、控、見越、前置内副など、いろいろ定められた枝の部分があり、それの長短と配置、それらのバランスについての考え方、それを定めることが花形を構成することになるのですから肝心なことです。枝と枝によって作られる空間(すきま)の形とその美しさ、の花形は前後を深く作り、高低と谷の深さ、美しい枝葉の処理、整然とした配列。ことに生花には水際(みずぎわ)の揃え方とその技法がいちばん大切です。生花の特徴とされる最も重要な部分は「みずぎわ」にあるといえます。みずぎわをひともとに美しく一瓶作り上げる技術はその作品に気品をもたせることになります。時として美しく揃えることのみが最上とはいえないことがあります。これは全体の花形をにらみ合せて、わざと「水際」Iみずぎわ、を素朴にゆったりと作る場合があります。これは水際が不揃いであるというのではなくて、その作品に悠然とした雅趣と品格をもたせるために作者が意識して加えるテクニックなのです。日本の伝統芸術というものは、こんな点に大変、要点をついた教え方/4... j i .. し・、一すぐれた技巧うめもどき白椿ウメモドキと白桁の生花。自然趣味の自由な花形です。前ページの白椿の生花と同意で、桑原専災流ではこの様な形を」草」そうの花形といいます。写真では十分わかりにくいが前後の深い花形です。上方の真の部分は自然のままに刊由な形です。よい生花をつくる必要な条件

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