11月号
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収穫感謝祭(十一月下旬)の頃、ニューヨークの郊外の庭で、夕方掃き集めた落ち葉の焚き火の煙を見ながら座っている初老の男をスケッチしたピlト・ハミルの短編小説がある。彼はふと、若い頃住んでいたマン焚火仙驚ハッタンのアパートメントの部屋の様子を思い浮かべたり、今年のクリスマスには、息子や娘達、そして孫達をどう迎えてやったらいいのかな、と考えたりしていると、妻が庭にカクテルを持ってきてくれる。そして「もうそろそろパーティーに出かける時間だから着替えをしてね」と告げられる。家の中に入って行く妻の後ろ姿を眺めながら、彼女も中々締麗な女性だな、と思ったりする。ただそれだけの短編なのだがいい小説である。私達も平凡に一日を送っている。だがそんな一日の中のほんの一切れでいい、切りとって掌の上にのせてみると、思いがけなくいいものなのである。群青色利八角花瓶9 花材水木の実手重菊花器

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