11月号
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無季節的・・・百合の一族は、地球上で最も繁栄している植物の一つで百合科には二四O属がA豆まれていて、その上各属にはそれぞれ変種がある。そのうち、私達が百合の花としていけている百合には原種が約一OO種もあり、それらの園芸品種が次々に作られ続けている。園芸品種はその親になった百合の原生地によって八群に分けられている。そのうち、作例に使った「コブラ」は濃赤色の花で、八群の中のジャパニlズ・ハイブリッドのうちの一品種で、この系統の百合の親は、日本の山百合、鹿ノ子百合、笹百合、乙女百合、訣百合などである。作例のスマトラは、七j八月に咲く日本の鹿ノ子百合が主な母種なのだろうが、それより色が濃くて花径も大きいので、いけてみると存在感がかなり強い。だが十月に売られていたコブラは、日本の夏に咲く鹿ノ子百合を母種としてハイブリッド(交配)された品種である。私には夏の花としての鹿ノ子百合の印象が強いので秋らしい感じの花材とのとり合わせは避けて無季節的な花材としてフォックスフェイスを選んだ。このフォックスフェイスは、黄色に熟したのを使うことが多いが、まだ熟していない浅い緑の実は爽やかな色をしていて重々しくない。この色のフオツクスフェイスと、濃赤色のコブラのとり合わせなら、黄色と黒のコントラストが強くて、斜めに立ち上がる変わった形の花器も使えそうである。右に傾いた花器に、右向きにかなり重いフォックスフェイスを挿した。見た目には多少不安定そうに感じるかもしれないが、花器にはしっかりした平たい足がついているので、物理的には無理なく安定している。そして両手をひろげて走っているような姿にいけ上がった。花材コプラ(濃紅色の百合)フォックスフェイス花器黄・黒紬斜立花瓶仙粛作10

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