11月号
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ボリス・ベツカl〈表紙の花〉表紙の菊の名前はポリス・ベッカl。どこかで聞いた盆削だと思っていたら、「たしかテニスのデヴィス・カップ戦で有名な人ではなかったかしら、」とお弟子さんに教えられた。はじめて見たのは丁度六年前の秋。ストックホルム(スウェーデン)の花市場で見付け、「花ふたり旅」の表紙で素子が持っているのが黄花のポリス・ベッカーである。この表紙の写真はバルト海に浮かんでいる鉛筆のように細長いエlランド島の取材中にとったスナップである。この島は秋になると、バルト海からの強い東風に吹き曝される。私から少し離れたところでポリス・ベッカlをいけていた素子は花を三Oれ近い強風に吹き飛ばされ、追いかけて行ったのはいいが、の茂みに手をつっこんで血だらけになって帰ってきた。だが花はどこまで吹き飛ばされたか見つからず、何とも云えない淋しそうな顔だったが、それでもすぐ気をとりなおして私の立花を手伝ってくれた。黄と向のボリス・ベッカlにとり合わせたのは撫の紅葉である。そしてエジプトの花瓶の下にトルコのスカーフを敷いている。撫は葉を正聞に向けて挿し、紅葉した葉色を大きくひろげた。花材ボリス・ベッカl荒川被撫2

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