11月号
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冬椿壷「椿」は春を迎える花、盛春に咲く花という意味で、作られた国字です。10月より咲きはじめ、春5月まで、山に咲くつばき、庭のつばき、園芸品種など多くの種類があります。晩秋より12月中に咲く椿に「冬つばき」と雅名をつけて瓶花などに好んで用いますが、冬のさきがけの花として、ことに季節感の深い花です。中国の「荘子」に「大椿八千歳云々」と書かれており、これはいつまでも年をとらない、たくましい長寿の巨木のことをさしており、めでたい意味をもつ、いわゆる瑞樹のことであります。中国では椿を鳳凰や麒麟、竜などと同じ様に架空の瑞樹とされ、尊重されておるのであります。日本の古い書物の中に、千代、ふたばの松の末かけて」などという言葉もあつて、しらたまつばきは殊にめでたい祝意をもつ花として、古来、の中国思想の伝来から延長しているものと考えられます。新年の花として白玉椿や八重椿を好んで活けるのも、これによるものでありましよう。椿は中国と日本が原産地で、世界各国に栽培されていますが、(洋名、カメリア)は数百種に及ぶ品種がつくられております。つばきは「山茶」と書くのが正しく「椿」はその後につくられた字で、「山茶花」と書いてつばきと読んでも誤りではありません。「さざんか」は椿と同種ですが、その中に初冬より隆冬まで咲く、八重咲のがしら」と呼んでおりますが、これが「寒つばき」という種類でありま「玉椿の八賞美されているのも、こ本来は東洋の花で、今で(紅色)さざんかを、「獅子す。古語によるとつばきを「つばい」と発音して「つばいもち」椿餅、「つばいもも」椿の実、などと呼んだことが文献に見えています。今年の春、3月1日から27日まで、京都府総合資料館において「椿ーその美術と工芸展」が開催されましたが、出品されたものは室町、桃山、江戸時代の美術工芸品約80点で、絵画、染織、陶器、古書などの中に椿の図を主題に描かれた名品の展魏会でした。作品の中にある椿の品種をみると、数十種にわたり、そのうちに伝尾形光琳筆「梅椿図屏風」ーー仁和寺蔵ー|は図中に白八重椿と紅色卜伴(ぽくはん)のつぎ木をして一株とした図があり、その頃のつばきの園芸技術は、すでに相当進歩しておったものと考えられます。この展観会には桑原家元より左記の花道伝書を出品し、巻中にある椿の絵図を見ていただきました。桑原専度流百瓶之図三巻江戸時代写真の瓶花は、サンキライ、白玉つばきを、トルコ青(緑青色)の扁(へんこ)に活けた垂体瓶花です。椿は大体、たけ短かく活けることが普通となつています。小品の一種梧がよく、盛花瓶花には副材として短かく用いる様にします。(立花絵巻一巻江戸時代専渓)No.44. 45合併毎月1回発行桑原専慶流編集発行京都市中京区六角通烏丸西入桑原専慶流家元1966年11月発行いけばな

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