11月号
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さざん十三世専渓水仙立花晩秋、父の命日の頃庭の寒椿が咲きはじめる。水仙の初花の時季である。この水仙の立花は、「桑原専渓の立花」の中では二月に立てられたものとなっているが、私は十一月になるとこの花とともに父の顔が想い浮かぶ。父は蔵の階下を改造して書斎にあてていた。この立花の前置に使った寒椿は、書斎の前に咲いた一枝で、長い間眺め続け、滅多に切ることのなかった大切な古木である。父は立花をとくに大切に考え、簡単に教えられる花とは思っていなかったようである。私にも教えるより、自分の立花を手伝わせることによって身につけさせようとしていた。だから、父の生前、私自身の立花を父の前で立てたことはなかった。良い教育だった。長年手伝っているうちに、自分の立花に対する夢が大きくふくらむのである。はじめて助手をつとめたとき「隆ちゃん、あんたと一緒にやってると気持が和んでえ苫な。ずっと頼むで、」と云われた。今秋七回忌を迎える。花材水仙寒椿(山茶花)中国古銅手付花瓶「桑原専渓の立花」l主婦の友社刊ーより葉蘭花器か2

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