11月号
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専渓テキスト11月号は晩秋の生花(せいか)を活けて特集号としました。皆さんはお生花を料っていらっしゃいますか。盛花瓶花を専攻して習っていらっしゃる方も伝統のいけばな牛花についての知識をもつことが大切ですから、よく注意してこのテキストを読んで下さい。最近、都市地方を通じて日本の古い建築や庭園を見学される人が大変多いといわれます。事実、京都や奈良の古い寺院や草深い名蹟をたずねて建築庭園を鑑賞するのは、特に年令の若い人達が多いようです。これらの若い人逹は日本のふるさとを訪ねて日本の美術と史蹟を研究しようとする真面目な態度もありましょうし、また単なるハイキングとして訪れる人もあるでしょう。しかし、私は思うのですが、古いことに興味をもちそうな老人層が案外少なくて、青年層が多いということは、面白い現象であるし、考えれば若い人達が日本の伝統を理解しようとする好ましい態度ではないでしょうか。そこで、この考え方をいけばなの世界へもってきてみましょう。いけばなは六00年の伝統をもって今日にきたのですが、ふりかえってみると、この伝統的な立花や生花には今日のいけばなの弘礎となる形式や技術、考え方が広く深く研究されて、それが日本のいけばな芸術のすべてを作りあげているのです。したがって今日の新しいいけばなを習う人逹は、その版礎となる仏統のいけばなに典味をもつべきだし、また、それを理解して今日的ないけばなを作るべきだと思うのです。伝統の生花にはきめられた形があって、それに添って花形を作ることになりますがこの自然の草花や木の花を一定の形にはめこむことは、まことに形式的でありますし、植物の自然さを定型化するという点について、いろいろ問題が生れることになりますがまた一方、H本の花の芸術の伝統を知るという、或は古典美を研究するという連礎の勉強には大変役立つわけです。花か生虹毎月1回発行桑原専慶流編集発行京都市中京区六角通烏丸西入桑原専慶流家元1972年11月発行No. 113 いけばな

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