10月号
75/579

cこの花器も新らしい丹波焼だが、機色の土の上へくすんだ緑色の釉薬をかけた四方瓶である。口もとが細いので、花の分紐も多くは挿せないが、ツルモドキの枝振りの調子を選んで、背高い花器の前面ヘツル形を考えた。淡紅の菊を2本添えて入れたが、これで仝体の調子がよくなつていると思う。変化のあるツルの線を考えて形が作られている。の柚ぎるように枝を出して、下部のその前へ細いツルモドキの茎を2本c ⑬ 丹波焼は、鉄分のある土を硬質に焼き上げる関係から、主として黒褐色の素焼が特徴である。備前焼によく似た陶器、また焼きしめの陶器にみるように上釉(うわぐすり)の変化には乏しいが、民芸的な素朴なもち味の陶器である。そのはじめは食器、水瓶、酒瓶、茶壷のように実用的な陶器、いわば民芸品ともいわれる識子のものが作られたもので、その古い時代のものを見ると、たとえば「評徳利」などというのは、酒を口ほその徳利に入れ、それを褐の中に評かべながら暖めるといったように(風呂の中などに使ったものであろう)いろいろな生活の中の工夫がみられて面白い。なにしろ都会から離れた山村の中で生れた実用陶器であるから、主として仕活のための用具を作ることが目的であったらしい。近来、この硬質の陶器がひろく利用されることになり、植木鉢、土管、煉瓦、工業用品として範囲が広くなつているようだが、主として「土立杭」かみたちぐい、には花器、食器のような美術的用具、家庭用品が多く作られ、「下立杭」しもたちぐい、には工業用品が多く作られているようである。⑪これは掲色の花瓶だが口もとに少し黒色の上釉(うわぐすり)がかかつている。花はストレチアの朱色の花2本、しまがやのひきしまりのあるものを添えて清梵な感じの小品瓶花を作った。色彩的にも美しい瓶花である。3 .

元のページ  ../index.html#75

このブックを見る