10月号
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うめもどきぷなねらわれている私がこの花をいけている横で、順之助が黙ってみつめている。「この葡萄ほしいんでしょう。写真をとり終わったら冷やしておいたげるから、明日学校から帰ったらおあがり。今日はも、ユ授なさい」翌日一房出してやったら、一瞬のうちに食べ終わってしまった。昔、母が果物をいけている頃からちっとも変わっていない。墜栗は初秋の花材。必ず一度はいけるが三日ぐらいで茶色く変色してしまう。切り口を鋲で割ってアルコールにつけてバケツ一杯にぷをはって暫く水につけておくとよいようである。栗と葡萄にとり合わせたのは濃紅色のスプレー菩破。花器はくすんだ紺色の花瓶。重くて底が大きいので、これから多くなる果実を大きくいけてもしっかり安定してくれる。秋は実ものをいけるシーズンである。小さな実物、例えば梅擬でも実付きが多いものを横に大きくはり出していけるようなとき、底の大きい花瓶を使い、手にした枝をイメージ通りの形にいけるには丁字配りや十文字配りの他に花瓶の中に様々な仕掛けをする。花器花材栗〈2頁の花〉樫子(山毛樺科)葡萄(葡萄科)蕎被(菩蔽科)濃灰青色紬花瓶24EE2n, 野茨・野賢微(菩破科) ←じオかろやかな赤い実〈3頁の花V子供の頃、近くの山を少し登ったところに広い平地があって、鬼ごっこやキャッチボールをして遊んでいた。走りまわる中央だけ草がなく町い、ばら周囲の草むらの中に百平つように野茨が生えていて、知らずに通ると足を捕られた。野茨には刺がいっぱいついているのだ。しかしまだ野茨というものを知らなかったので、猪かなにかの民に引っかかったと思って少しパニックになった記憶がある。あれから数卜年。走りまわるのに厄介なトゲトゲの木を大人になって器にいけることになるというのも、なかなか味わい深い。ただし花材として附まわる野茨にはほとんど刺はない。つるつるの木肌で、細い立ち枝の上に軽やかに赤い実がのっている。こんな優しい姿ならきっとするりと足を撫でただけだっただろう。やや手ムルえには不足だが、花の咲いていた姿を想像できるくらい軽やかに実がなっている様子は、見ていて微笑ましい。季節の糸菊、嵯峨菊が小さな赤い実を優しく励ましている。そんな盛糸菊二色(菊科)嵯峨菊国芸種二色(菊科)花器かいらぎ紬水盤仙渓しドレ4,Auo13

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