10月号
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この号では創作的な自由な花型の瓶花盛花を活けて研究してみようと思うcすでに皆さんご承知の通り、基本花型は形が定つており、それによって基礎技術の練習をし、その基本型を少し柔かくして、形を省略したり或は花型を少しかえた応用花型を作ることになる。技術がしつかりして、いけ花の理解が深まつてくると、自分の思う様な自由な花型を作ることを考えることとなる。創作的な自由な形とはどんな程度のものだろう。この号にはそんな考えのもとに作った作品をならべて参考にしてみようと思う。基樅をしつかり勉強し、自分の思いを花の中に述べることのできる様な新しい盛花瓶花を作って欲しい。創作ダヒマワリ枯実①の瓶花は、蓮の枯実(褐色)ユーカリ(白緑)くるめけいとう(紅色)の3種。花器は亦く褐色(れんが色)の新しい形の陶器である。奥行の浅い扁平な花器で扁壺(へんこ)という形に類する花器。形もよ<彫刻も単純で活けやすい。この瓶花は蓮の実の配置と、その茎の線をどう配置するかによって花型が定るので、それを特に注意したが、まず全体の形がたての長方型になることに梗準をおいて作りはじめた。前方へ少し傾斜しているが、深くは傾けないで立面的に(壁の様に)立つているところに特長がある。後方に深くユーカリの葉、左方に入れたユーカリと右方の鶏頭が技巧ハスの柏実ユーカリケイトウヒマワリシ的でやや型に入っておるけれど、全体的には明るい形である。褐色と紅と白緑との色調の配合は、色彩的に考えても新しい惑覚をつくり出していると思う。蓮の茎の直線と曲線との組み合せに特に注意をして作ったが、この線と実の置き方によって全体の形も、惑じも定るので、この辺が一ばんむづかしい考案のあるところである。足もとを透かせるのも―つの方法だし、蓮の茎を一文字の横線に使うのも面白い構成ができるだろう。この様に花器花材をよく選択して、その上に新鮮なアイデアを活かすことが、何により大切である。そしてそれを思う様に作り上げる技巧が重要であることはいうまでもない。2 ②の瓶花は、ひまわりの枯実(淡褐色)開花5輪(黄褐色)しだ(黄緑)の3種。花器は、青く紫の交つた深い色の陶器で、形も下ばりのどっしりとした形の花器である。かなり花材の分盤が多いので口の広い安定感のある花器を選んだ。ひまわりの開花にその枯実をとり合せたが、同じ花の現実と過去のものをとり合せるのも中々面白いものである。このひまわりの花は新種で葉も柔かく水揚もよい。山のしだは水揚のよくないものだが、ことに新鮮な材料であったので、葉色もみずみずしい黄みどりの葉が、花器の浪い紫とひまわりの黄色と対照して、全く美しい色調となった。この壺を選んだとき、この瓶花はたつぶりとした豊かな惑じに入れようと考えて、花材もそんな形のものを選んだが、出来上つてみると強いひまわりの黄色と、しだの豊かな緑が集つて、花型もそれにふさわしい様な形に作れていると思う。この場合、花器の形と色が大切で、これで花のひろがりや重みを、しつかり引きしめて、明るさを作り出すとともにこの瓶花の格調を高くしていると思う。横のひろがりも前後の深さもゆったりとして、豊かに美しい花である。ひまわりの実と花とを―つに入れたのは、私としてこれがはじめてである。案外、面白いものだと思った。2

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