10月号
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シャンゼリゼ通りのカフェテラスでコーヒーをのみながら、と町の状景をながめる。人道の半ばまで並べた机と椅子。たくさんの人市街美ぼんやり達が私と同じ様にお茶をのみながら楽しそうに話あっている。一五0メーターほどの大通りのその両側は八メーターほどの広い人道で、マロニ専渓② エやミモザの大きい街路樹が、カフェテラスの机の上まで枝をさしかけている。すぐ近くに壮大な凱旋門が見え、私の前の通路にはいろいろな服装の人達がひっきりなく歩いて行く。中には色の黒いシネガル人、黄褐色のアラブ人やボーランド人など各国の人種(私達日本人もふくめて)が入り交って、それぞれ楽しそうに談笑して行く。美しい婦人達の服飾美も屈ながらにして拝見出来るという、賑やかな町並である。ます。ハリでは二流どころの街頭風景といえる。このシャンゼリゼ大通りを東南に向かって3キロほど行くとコンコルド広場でルーブル美術館からノートルダム寺院のあるセーヌ川のシテ島へ行くことになる。パリの市街をみながら、いちばん感心したのは建造物の美しいことである。この辺は市街の中心でもあり歴史的な建築物がつづいているのだが、それにつづく市街の建てものはほとんどが六陛、七階の高層に統一されており、中心地から幾キロといえるほど広い地域内にある建てものの高さが一定していることである。さらに百年以上にもなるという市街地の建てものは、ほとんどといってよいほどさびた黄土色の壁色に統一されていて、そこから伝統的な品位と落着きが感じられるのである。黄。ハリの広場は数多くあり、広場に土色の建造物と緑の街路樹との調和はまことに美しい。マロニエの樹、アカシャ、。フラタナス、ネムの樹などひとかかえもある太い樹木がどの街路にも碩えられていて、それが大きい傘の様に枝をひろげてしっとりとしたうるおいを感じさせる。少し広い中心地には必ずといってよいほどカフェテラスがあり、渋いコバルト色や朱色のビーチ。ハラソルの様な日覆いの下でコーヒーや軽い食事を楽しむ様になっている。つづいて公園がある。そしてそれに歴史的な建造物、銅像があって、。ハリの市街そのものが美術的追形と考えられるほど美しく典雅な都市美をつくりあげている。セーヌ川にかかる栢は、ルーブルに近いロワイヤル栢、コンコルド広場へのコンコルド橋、万園博に際し旧ロシヤ帝国より贈られたといわれるアレキサンダー三世栢、シャイヨー宮からエッフェル塔の河岸にかかるイエナ栖。これらの橋は彫刻に飾られた壮麗な美術的建造物であって、それらは古い年代を経たものであろうが、今日、日本でみる機能的な橋とは迩って、装飾的な華麗さが深く感じられる。これは古い日本の木造橋(そり橋にぎほうしの橋柱のある)その古雅な感じと一致する様に思う。。ハリの町は全体がくすんだ黄土色で統一されている。建築も梢も石俊彫刻も黄土色がほとんどで市内の簡業地区の建てものもほとんど黄土色で統制されている。私の短い滞在期間に。ハリ郊外に車を走らせたことが三回ほどあった。郊外の田園地帯には収穫後の畑地が多かったが、この土の色と市内の建造物の色調がほとんど同じであることは、。ハリの建築や彫刻に伝統的になにか深いつながりがある様に思えたのだった。町を歩くと少し広い樹立の中には小さい唱水があり、しゃれた彫刻のある街灯が配置されている。その美しい調和は心にくい程の配慮がされていて、ほっとした安らぎを覚えるのである。そして。ハリの女性は実に美しく秤こなしがしゃれている。服飾に対する調和とか趣味がよく、色の好みが実によい。働く女達さえもそれなりに美しい。その形が絵になっている。さすがは本場だとしきりに感心する。私のホテルの高い窓から見る町の風景は古い映画でみた、。ハリの屋根の美しさそのままであった。日本の都市でみる屋上というものは不揃いな見苦しいものだが、バロック建築の寺院や尖塔が遠く近くにみえて、それをかこむ様に市街の屋根がならんで見える。セーヌ川の畔の街路樹パリの108間シャンゼリゼ大通り(凱旋門)10

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