テキスト2011
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水冷仙た仙い風に耐えながら凍と咲く水仙。ゆるやかにねじれた細い葉と、その間に立ち上る花の姿には品格を感じる。房咲水仙は遠く地中川摂但厚からはるばる日本にやってきた。今では冬のいけばなになくてはならない花だが万葉集には出てこない。平安末期に渡来したと考えられているが、少しずつ日本の風景にとけこんでいったのだろう。水仙の産地としては福井県の越前海岸、兵庫県の淡路島、千葉県の房総半島が三大産地として有名だ。越前には昔、父や帥範の先生方と一緒に訪れて、越廼村の水仙栽培を見学したあと、宿で持参した笠間に水仙の生花を稽古したことがある。越前の水仙は葉がよく締まって美しいが、同じ太さの水仙を頂いたために、袴に葉と花を入れ直すのに難儀したのを覚えている。旅館の矩燥に入って皆さんの話を聞きながら水仙をいけたことは、蟹料理とともにいい想い出である。淡皆同や房総半島の水仙の大群落も是非一度訪れたい。海へ続く斜面を埋め尽くす水仙はさぞ圧巻だろう。最盛期には一本の花茎に十輪もの花が咲き、何万本という水仙がすべて海のほうを見ているそうだ。水仙のいけばなは、その優美な姿をいけたい時は少ない本数のほうがいい。実際に一番最初に本仙を器に立てた姿のなんと美しいことか。その雰囲気を壊さないように二本、三本と加えてゆくのがなかなか難しい。それぞれの聞を空けたり、高さを工夫して、奥行きのある配置にするのがいいだろ、っ。盛花や投入で水仙をいけるとき、緑色の細針金を用立しておく。一本一本、理想的な葉と花の姿になるように針金で足元から少し上のところで括っていけるといい。作例には梅の苔木を横へ出し、水際にお多禍南天(目本科)の紅葉を加えた。苔の灰白色と赤色の対比が美しく、水仙の緑が際立った。括ってえる渓10

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