テキスト2011
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京の住宅地の道路の霜柱を思い出した。地面に顔を近づけてよく眺めると締麗なものだが、ご存知のように東京の土は細かくて黒っぽい。表土が霜柱で浮き上がる。その頃、中目黒の祖父のいえから学校に通っていたのだがIRの回黒駅までの道の半分は未舗装で霜柱が靴の下で溶けて折争ナ入れしたのに泥まみれになってしまう。葉牡丹の白とピンクに合わせたのはガーベラ。濃い赤紫色のガーベラだけでは淡色の葉牡丹とかけはなれた配色になるのでピンクのガーベラを加えている。冷たい銀色のワインターラlに霜柱を思い起下」すような色と形の葉牡丹。そしてガーベラとなる。この盛花には、いけばなの季節感がないように思えるかもしれない。だが恥の気分のどこかで昔の上泉京の郊外、ーといっても今はそんな風景ではなくなってしまっているがlでの冬の朝を思い出させてくれる。霜柱の話は私の大学生の頃の記憶だが、もっと小さい頃の記憶は多分美しさが増幅されて残る。物の大きさ、幼かった頃、大きな風巴場や広々したと感じていた庭も大人になると小さく見えてしまう。だが幼い頃美しいものは、より美しく、大きいと思ったものはより大こ柱の仙葉牡丹をいけていて、昔の東霜粛、司ノ。ラナンキユラスは花屋で良く見きく感じた記憶は私の一生にとって大切なものである。おそらく今の私もそんな威内比に支配され続けているのではないかと思う。花材葉牡丹(油菜科)ガーベラ−一色(菊科)銀製ワインクーラー父はよく私がいけた花の名前を聞く。「こんな名前ぐらい憶えておいてよ。花の名前を正確に知っておくのも仕事の一部でしょ」と云うと、「桜子、人間の脳には人それぞれの記憶の容量ってものがあるんだぜ。俺の頭はもう満杯らしい。あまり大切でもない古い記憶は追い出して、その代わりに新しいことと入れ替えればいいのかもしれないけど、そんなにうまくいくものでもないらしい。でも古い記憶、或いは知識の断片がつながり合って中々いい考えも出てくることがあるんだ。楽しいぜ」と喜んでいる。その上「a玄われたことをすぐ忘れてしまうというのは脳の健康にいいことなんだ。これを健忘症というんだ」と平然としている。それで楽しそうにしているのを見ると、それ以上注意する気にならなくなってしまかけるようになったが、ると春の花らしく感じる。雪柳や花の名前楼子花器二月にな2

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