テキスト2011
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枯れゆく葉オモダカ(沢潟)の葉はキツネの顔を連想させる。あまり花屋には出回らないが、水生植物らしいしとやかさを感じる花材である。ちょうど枯れ色に染まり始めた葉を花フジさんが大切にとっておいてくれた。茎まで黄色に変色した葉はみずみずしさをぎりぎり残していて、群を従えた親分キツネのような存在感がある。などと想像をふくらませながらいけるのは楽しい。水辺の草むらに身を隠すように走るキツネたち。段竹の斑入り葉を短くいけて、川べりの舞台をつくってやる。沢桔梗の紫色の花の下でじゃれ合う子ギツネたち。キツネの跳躍を思わせるような段竹の葉のひろがり。花のいけ方は人それぞれだが、花から受けた印象を大切にしていけた花が、それを見た人にも伝わってくれると嬉しいし、そういう心の繋がりもいけばなの魅力の一つだと思う。黒いパックに置くと、オモダカの微妙な枯れ色が際立った。(稲科)沢桔梗(桔梗科)沢潟(沢潟科)花器灰色利水盤花材段竹色仙11 渓

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