テキスト2009
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】f−仙粛彩歳ぜんEよくかんかす由るかん夜半に本を読んでいると、室町通の空の上でビュiッ、ビュlッと風の吹き通る音が聞こえてくる。聴くとはなしに聴いていると、いつも同じよ、つな音である。昔、東福与の家の茶室で、お酒を飲みながら本を読んでいたときの風の音とは少し違うようである。初・冬の今頃だと、松の梢の上を通って落葉した楼や通天楓の裸枝を吹き抜けて行く風の音、落ち葉が舞い上げられてコッソリと乾いた音を立てる。風の合間には茶室の北側の崖の下を値月橋、通天橋、臥雲橋の下を通って流れる洗王澗の水音も幽かに聞きとれる。春になると木々の葉も茂って庭を吹く風の背も砲やかになってくる。障子を開け放しておくと新緑の匂いがゆったりと部屋に満ちる。夜更けに一人で飲むお柄。私だって、その頃内玉の歯にしみとおる秋の酒はのむべかりけるという旬が大好きだったのである。炭をおこして炉に入れ、お茶の釜で湯を沸かし、水指し(多分二お酒を入れ、気に入ったお徳利を選び、お盆に好きな盃と、おつまみは大徳寺納豆一握り。お釜の湯は沸騰させずに温澗でゆっくり存んだ。その頃、昼間は中国思想史や、社会神い々いしのいだよろううなか木」をと燃心やのし巾てでし1fLmや岐まくって一一人しづかにv一)にの生活史の本を読んでいたが、秋の夜は唐詩、李内や壬維、それからモlパッサンやサマセット・モlム、アーネスト・へミングウェイ、ピiト・ハミルの短編をよく読んでいた。杢白の明るく勇ましいような詩、王維の閑かな五舌羅伺は秋の夜には心にベルみこんでくる。ヘミングウェイの、たしか「海流の中の島々」の中で、海岸で流木を集めて焚火をしながら「こんな美しい、節、それからピlト・「ニューヨーク・スケッチブック」にこんな描写があった。ニューヨークの、多分背のプロンクス辺り、広い庭で落葉を集めて焚火をしながら、フロリダに住んでいる娘が、このクリスマスには帰ってくるのかな、などと想いながら煙を眺めながらぼんやりと件んでいる。奥さんに「もうそろそろ今夜のパーティーに行丘君替えをして下さいね」と声をかけられて部屋に戻る。それぞれ、ただそれだけの短編なのだが私だって晒木に色んなことを感じるし、ニューヨークの秋の夕暮れの焚火をする人から綴々なことを惣い描くことができる。幸せなことだと思う。花材寒牡丹お多福南天熊笹花持備前焼水盤寒の花〈8頁の花〉ハミルの仙鷲8

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