テキスト2008
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あさみすす、子供の頃、キャンプではまず火のおこし方を教わる。今のように百円ライターは無く北新聞とマッチは必需品で、マッチが湿らないように蝋でコーティングしてくる者もいた。昔々は火は燈を打ちつけて火口に火を移しとっていたわけだが、その火ハには茅花やパンヤなどの綿毛が使われた。山火口の果実の冠毛も火口にされたのでこの名がある。山火Uは菊科・山火口属の多牛革で秋に咲く花は繭に似る。作例に使った山火円はパイプに似た花の奥に僅かに赤紫色が覗いている。いけてみると消し炭のようで合わせる花が思い浮かばない。そこで識の枯尾花で綿毛のイメージを膨らませ、糸菊と鳥兜で潤いを足してみた。黒いパックで宜首穴に撮ると枯尾花の風を苧んだような形が面白い。亡くなった円がよく薄の穂は捨てずにリボンで束ねて飾っていたのを思い出す。あの頃は何か魔法を見ているような気がしたものだ。父も枯れた植物に命を吹き込む魔法をもっている。あたかも心の中に日に見えない帆があって、その心の帆が草木の思いをのせた風を受けとめて、気持ちよく膨らんでいる。そんな感じだ。花材山火円枯尾花糸菊(白薄紅色)鳥兜花器黒白陶花瓶ひうちはくち風をは苧らむ仙渓11

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