テキスト2007
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(第三種郵便物認可1985年日月お日)桑原専慶流いけばなテキスト悶号2007年1月1日発行(毎月l回l日発行)桑原専慶流家元発行松科の縦属のうち、日本特産の縦と、裏白縦は、日本でクリスマスを祝う週間が広まってからシーズンになると花屋にその切枝が並ぶようになった。使った縦は五十立ち上がらせると形がいい。いける季節としては、松と同じで初冬から三月にかけての冬場の花材である。様々なとり合わせが考えられるが、作例ではスイートピー、ピンクの胡蝶蘭を金色の格子柄の横長水盤にいけ、その後に縦と赤褐色のカラーを紺色のコンポートに立てて添えた。花材花器昨晩ケンチャンから電話がかかってきた。「オジイチャマ、ちょっと外へ出て。物干しに上がって。上がったか、そしたら上見て。お月さん締麗やろ!ムユ夜は満月やねんで。」それから暫く電話が続いた。彼の話によると、あと四、五十億年したら太陽は力尽きて爆発してしまうそうである。そのせいで地球もパンクしてしまうらしい。だが「オジイチャマ、まだ心配せんでも:・」と云ってくれた。定価五二五円どの長さだがγほ縦赤褐色カラースイートピー胡蝶蘭金色格子柄横長水盤(前)濃紺紬コンポート(後)ZG一\\考委者・WC〈〈m凶HRmzmwDWO−−85電話が終わって暫く空を見上げていたが、初冬の夜空にしては見える星の数が少ない。大気の濁りと、地上の照明が強いせいらしい。今でも、いちばん心に鮮やかに映る星空は、南太平洋の小島で見上げた黒に近い濃紺の天空である。南十字星が見られるというので、夜半に素平正砂浜に出かけたのだが「わあ、凄い!」と云ったきり、二人とも話す言葉もなく、一時間ぐらい寝ころがって空を見上げていた。「よかったね」と手をつないでホテルに戻ったのだが、あんな夜空を見上げるのはいいものである。果てしのない宇宙、それにくらべて微小な自分。だけどこんな小さな自分でも、宇宙を意識することのできるのだと心がふくらむ想いがする。太古の人々は、都会で暮らす私と違って、天空を移動する星を、ずっと身近なものとして眺め、そして自分を見つめ、朝になれば飛ぶ鳥の声を聞き、草原を駆けてゆく鹿の姿、風の感触、花の香りと季節と密着して暮らしていたのである。毎夜動く天体、咲いて実る草木は自分と自然そして{丈由とは一体であることを素直に感じとっていたのではないかと思う。共に生きている宇宙なのである。そして身近な人が亡くなっても人としての存在は魂となって残るという考えは、その辺りから生まれたのではないだろうか。縦もみも仙み驚仙驚彩歳仙粛『

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