テキスト2007
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しぴみどりくわずいも南の島紺緑紬大鉢(清水保孝作)立花松一色大学一年生の時、無人島で生活したことがある。沖縄の西にある慶良問列島の小さな島、{女室島、だ。そこで食べてはいけない不喰芋を口に入れて、しばらく口が揮れた話は以前に書いたが、今にして思うと、島の植生などをもっとよく観察しておけばよかったと後悔している。ただ、やたら赫の多い細い葉が生い茂る植物があり、その幹が蛸の足のように分かれて地面に突き刺さっていたのを覚えている。植物に詳しい先輩が「あれはアダン」と教えてくれた。丸い大きな実もなっていたが葉の椋が痛くて近寄れなかった。以来、アダンの実を一度いけてみたいと思っていた。幸運にもいい形のが手に入ったので、同属で練のないパンダナスの葉をわざと折り曲げて添え、この秋最後の鶏頭を令わせた。南の島を想いつつ。花材アダンの実パンダナスの葉鶏冠鶏頭花器花型行型左流枝花器古銅立花瓶名古屋での桑原専慶流いけばな展に松一色の立花を立てた。名肯屋市が管理する「東山荘」という日本家屋で、十四年ぶりに東海支部の皆さんと花をいけることになったからだ。前回は父・仙粛が蝦夷松の立花を出品した同じ場所に、今回も私が立花を飾ることにした。東山荘には広大な庭園があり、二階から見下ろすと大きな楓が目の前にあって、九月の末、だったがそろそろ色づき始めていた。そんな景色が目に入る部の床の間には松の翠だけにするのがいい。中央の大床に松一色の立花。その左右の脇床に株〈表紙の花〉仙渓〈二頁の花〉仙渓2

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