テキスト2006
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もやえぞまつ蝦夷松の立庭を彩るのは花だけではない。明け方から何種類もの小鳥が飛んできて鳴く。飼っている猫が、前脚を窓枠にかけて真丸い目を開いて、小鳥の姿と戸を追っている。何かの拍子でとび出して、小鳥を追い散らせたりしないよう、そんな時には長い紐で食卓の足につないでいる。暫く猫と一緒に小鳥を日で追う。何とも優雅な一日の始まりだが、八時になると、隣りの工事現場が、大きな音を立てはじめる。会場のこの並びに、右から五葉松の立花、苔梅の生花、一位の立花、這柏槙の生花の四作と、大型の生花と立花を置いた。どれも十二月を意識していけた四作である。花器ペルシャ緑粕花器八天十を一突頁くの蝦花夷〉松花の梢仙。月明かりに光る長の瞳。森の中には霧が立ちこめ、遠く谷川の音が微かに聞こえる。蝦夷松の傘のような樹形が夜空に浮かびあがり、這い昇る龍のように晒木が重なる。どれだけの歳月を経てきたのだろう。自の前の樹は、ただ優しく私を見つめている。花器古銅立花瓶花材蝦夷松真副見越請花材苔梅紅椿山榔踊前置黒百合正古川一隅木胴流枝宇野仁松作ニず・えふ〈ろ今控枝渓11

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