テキスト2005
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あやめ一月は松、二月梅、三月桜では四なご月よみが藤。それが旧暦での代表的な花暦である。そして花合わせの花札では、五月が菖蒲(八つ橋が描きそえられているので杜若だろう)、六月・牡丹、七月・萩、八月・薄すすき、九月・菊、十月・紅葉、十一月・柳、十二月・桐となっている。花札での花合わせは監事によく使われたので、敬遠されることもあったが、四季の花で遊ぶというのは、かなり優雅な国民性である。花と賭事で私の好きな情景は、「源氏物語・四十四帖・竹河」の巻で、お姫様二人が碁を打っている。お二人は庭の桜を賭けているらしい。美しい賭け代である。勝ったところで、「この桜は私の桜」と云い張れるだけのこと。そんな大昔からの京都の桜、桜が終わる頃、藤が咲き始める。京都にも藤の名所は多いが、私の好きなのは京都から滋賀県への比叡山の山聞を抜ける白河越えと、途中越えで見られる山腹の山藤である。藤色に合わせて鉄線(クレマチス)の紫の濃淡。花器は京都の春の空の色に近い。これまでに自分の知ったこと、覚えたことを繰り返し楽しみたい。花器空色粕花瓶かしろ〈2頁の花〉花材藤鉄線(クレマチス)二色仙驚藤2

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