テキスト2005
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ぼたんぜいた〈ばんぺいゅう晩白柚暖かさを今年も年の初めから、晩白柚を飾らせて頂くことができた。熊本にお住まいの菊城さんが毎年暮れに、とびきり新鮮な良い実を送って下さる。母が毎年工夫して盛物としていた。二つに半割りして、シクラメンと取り合わせた時は、さすがに驚きだったが、写真を撮り終えるとすぐに皆で賞味させていただいた。一個の実で家族とカメラマンが充分に堪能させてもらえるほどの恵みの果実なのである。今回は南天と共にココヤシの軸で編んだ箆に盛り込んだ。南天の実も多く集めると、晩白柚に負けないくらいの迫力がある。木瓜は保ちのいい花である。昨年十二月の初めにいけた生花の木瓜は月末になっても咲き続けていた。作例に使った木瓜は、関東木瓜とよんでいる栽培品種で、枝を切りつめて肥育しているので短くて太い枝に花が密集して咲く。牡丹は木瓜と反対に保ちの悪い花だが、促成開花させた花でも、寒い部屋なら四あ、かめ五ゃな日ぎは保ってくれる。芽吹いた赤芽柳をそえて暖かな口のくるのを待とう。花材朱木瓜牡丹赤芽柳花器銀彩藍色紬花瓶〈4頁の花〉〈5頁の花〉仙粛棲子京都新聞「現代のことば」お正月を迎える準備は暮れの二十九日から始まる。私と娘の棲子は午前中はお重の材料の買い出し。家に残った者は内外の掃除。花をいけて祝膳を出し・・::。午後ごはしら買い出してきた魚や鴨、野菜の下帯えにかかる。三十日、三十一日は二人とも一日中ム且附に篭もりきりでお重の料理にかかる。此頃は少し品数を減らしたが、それでも二十品ぐらいは作る。以前は三十品ぐらい作っていた。除夜の鐘が鳴り終わっても料理は終わらない。三日もかけて何人分作るのかというと、ただ家族の分だけなのである。暮れの二十八日に一年の稽古を終えると、五日過ぎまでは来客を迎えないことにしている。あるとき「賢沢なお正月ですね」と云われたが、私にはお正月とはそんなものなのである。まだ子供の頃、若かった母が女中さんと一緒に湯気の立ちこめたム旦附で作っていてくれたお正月料理、何か一品出来上がると味見させてくれたが、その味は心に染みついている。明けて一月日の朝、下着まで新しいも男のはを朱揃塗えりて、も女らはっ黒て塗祝とそり膳。にお大おつぶ福〈くち茶ゃ。を飲むと父が順々にお屠蘇を注いでくれる。仏壇も神棚もない家だったが、今お正月が来てくれる4

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