テキスト2004
90/140

又、勉強するの?仙粛今私がもう一度大学に入れてもらえるなら植物学科に行きたい。植物学科へ入れば、植物学一般については勿論教えられる、だろうが、とくに興味を持っているのは植物生態学である。毎月テキストに使った花材の解説を書いているが、そこで感じるのは自分が植物に関して、いかに無知であるかということである。日本のいけばなは、植物の生態を見詰めることから始まっているのだが、明治以前の人達は自分の目で、いける花の生態を季節ごとに見きわめて形にしていた。助けにかりたのは本草学だった。現代の植物学のような精綴なものではないが、植物に関しては大変実用的な学問だったように思つ。江戸時代は現在よりも都市が小さく、京都でも町を一寸出はずれるともう農村だった。その上、庶民も園芸に熱心で植物の生態を環境(季節、気温や湿度も含めて)と合わせて実感していた。花と人との間柄は今よりもっと濃密だったのである。左の生花図は、江戸時代の終わり頃いけられた菊だが、おそらく自分の家の庭で、自分がいけるために育てたものだろう。いい生花である。だが現在世界中の花が日本に集まっている。私はその生態を知って花をいけたいのである。(以下次号)11

元のページ  ../index.html#90

このブックを見る