テキスト2004
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てんなんSんななかまどなつぎくろじみやまなん夏菊昔から露地で栽培される菊のなかで、五月から八月にかけて咲く菊のことを夏菊と呼んでいる。ハウス栽培が盛んになってからはその生産量は減ったが、現在も昔ながらの手法で栽培が行われている。夏菊の栽培は前年の夏に菊の茎を短く切り、芽を一つだけ残して土に植える「芽刺し」をして苗を育て、その苗を秋に植え付けて冬至芽をつくることで、その冬至芽が春先に伸びて奮をつけ夏に開花する。昔は秋の稲刈りから初夏の田植えまでの休耕田を耕して夏事乞栽培することが多かったそうである。作例の夏菊は淡い肌色で、露地で開花した花を柔らかなネットで丁寧に包んで売られていた。和菓子にも夏菊というものがあり、これからも季節の風物として残してゆきたいものの一つである。夏菊には初夏の風を感じる深山南天(南京七竃)の横枝をとり合わせ、桔梗を添えてあっさりとした色調でいけた。夏菊の花が立派なので、大きめの手付箆を選び、竹の落としを龍の後ろ側に細針金で固定し、動かないようにしておいてから投入にしている。花器花材夏菊(仙渓作)深山南天桔梗手付竹能9

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