テキスト2004
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かんえいかんぶんふしゅんけんせんけいりつかいまようすがた宴の御案内を差し上げましたところ、このように会場に溢れるほどの御来客を迎えることができまして、望外の喜びと深く感謝申し上げます。御光来市玄cましたのは、日本いけばな芸術協会理事長の肥原碩甫先生。そして日本いけばな芸術慶耳の要職についておられる先生方。京都いけばな協会会長の大津光章先生と、京都いけばな協会の皆様。そして桑原専慶流の一門の各位でございますが、私が只一人政治家として尊敬申し上げております前京都府知事の荒巻禎二京都文化博物館館長が友人として御列席下さいました。このように多くの方々の前に立たせて頂いて、家元を次の代に継がせますことを御報告申し上げるという段になりますと、自然と私の来し方をふり返るものでございます。私が十四世家元を継承しましたのは.一十二年半前のことでございます。そして本日家元を副家元の和則に譲ることができるようになりまし桑原専慶流第十五世家元継承披露宴本Hは、桑原専慶流第十五世家元継承披露桑原仙驚挨拶たのは、皆様方のお支えがあってのことと深く御礼申し上げます。ところで和則は第十五世家元を継ぐに当たりまして、私と同じ「仙渓を名乗りたい」と強く希望いたしました。この花競は、初代冨春軒仙渓のものでございました。それはおそらく後漢の始祖光武帝時代の厳光に因んだものではないかと思います。厳光は高潔な人物で学識も深い人でした。光武帝の補佐役を辞退して冨春山に帰り、麓に流れる冨春江で釣りをしたりしながら文雅な生活を送りました。初代仙渓はその人柄を偲んで専慶の別号を「仙渓」としたのではないかと思います。今日、この場で和則が桑原専慶流第十五世「冨春軒仙渓」となります。願わくは、初代のように花技に精通し、学識を重んじる家元になってほしい、その上厳光のような人柄をそなえてくれればと願っております。そして私は今日から「仙薪」と名乗ります。勿論花道には精進続けますが、これからは書薪での時間を、もう少しとれればと思っております。仙渓、仙驚を宜しくお願い申し上げます。又内側から私を支えて下さいました流内の皆様、そして家族の強い粋を有り難く感じております。わけでも至らぬ私を支え続けてくれた妻の素子にこの場をお借りして感謝の気持ちを伝えさせて頂きたいと存じます。皆様、本日この席においで下さいましたこと重ねて御礼申し上げます。家元襲名挨拶十五世桑原仙渓只今、私、桑原和則が桑原専慶流第十五世家元桑原冨春軒仙渓を襲名致しました。私が今日ありますのは、ひとえに本日お越しを賜りましたご来賓の皆様方、流内の皆様方の温かいご品運ご交友ご支援のお陰と感謝いたしております。そして生みの親、家族、親族。桑原家へ参可ましてから辛抱強くここまで導いてくれた十四世家元仙渓、母素子、妻棲子、妹はな、皆のお陰でございます。桑原専慶流は江戸初期の寛永寛文年間に京都で創流され、三百数十年の伝統を持って今日に至っています。流祖の桑原冨春軒仙渓は、当時、貴族、武家、寺院の床飾りとして発展していた「立花」の達人でした。深い教養と自由な精神の持ち主で、植物の自然にある形、出生のあらゆる状態を深く観察し、自由閲達な花型の創出を試み、一六八八年に「立花時勢粧」を出版して、その中で立花の奥深い魅力を詳しく解説しています。その後、各代の家元が立花や生花の普及に力を尽くしてまいりましたが、特に、江戸中期には七世専景が中国四国地方に旅を重ね、各地に門人を育てました。岡山県の善昌寺には七世家元追憶の記念碑が今も大切に残っています。江戸時代から明治へと移る激動の時代に、花道を含む様々な芸道は一時期消えかかりますが、十二世専渓がその建て直しに尽力し、花道復興を成し遂げました。続く十三世専渓は、わずか十八才で家元を継ぎ、後に立花の名手と言われるようになります。稽古の厳しきゃ格調高いいけばな、車越した技術は、その精神と共に今も私たちの記憶にとどまっています。そして、父、十四世仙渓は、妻、に花道の普及に努め、又その活躍の舞台を海外にも広げながら、真撃に花と向き合い、花道展や作品集でいけばなの可能性を世に問い続けて参りました。初代仙渓が「立花時勢粧」の中で次のように書き記しています。瓶上に南山の美をつくし、砂鉢に西湖の風色をうっす。力をも入れずして高き峰、深き渓を小床に縮め、至らずして千里の外の勝景を見ること。その術諸芸の及ぶところにあらず。いでや此の道に名ある人。この度の家元襲名に際し、花道の奥深さの前に身も震える思いでございますが、伝統を重んじつつ新しい息吹を吹き込んで参りたいと思います。皆様のお励ましを支えに、より一層、花技の向上に努め、門人の育成と花道の発展に意をつくしてまいりたいと存じますので、これからもご支援ご教導を賜りますよう、宜しくお願いを申し上げます。素子と共2

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